2021年12月21日火曜日

森林研究・フィールドトレーニング「近接リモートセンシングによる樹木の環境応答の評価」

担当の中路@雨龍研究林です。
今年の本フィールドトレーニングは11/7~12日(追加見学含む)の6日間行いました。

コロナ感染症の影響で9月開催を一度断念したのですが、11月の再募集では、信州大学、北大、東京農工大から4名の学部生が参加してくれました。
また、今回はゲスト講師の牧田直樹先生(信州大学)も2日間、参加してくれて、一緒に野外調査を行いました!!

初日は道内に集合。新千歳や旭川空港から、自己紹介や森の話をしながら陸路で移動。
名寄市の北大の苗畑を見学してから、雨龍研究林に到着。夜はリモートセンシングや分光観測についての座学を行いました。
2日目からは、天然の針広混交林に入ります。最初は、森林バイオマスの計測体験です。紅葉も終わってしまったので、今回はトドマツ人工林でドローン観測&マニュアル観測(樹高)を体験しました。

朱鞠内湖を望む高台にて

ドローン撮影した樹木のサイズを実測

上空から撮影した連続写真を合成することで森林表面の三次元データを作成します。
手動で樹高を実測した個体と比較するとどうでしょうか・・・・?

トドマツ人工林の立体画像
ここで計算した木の高さと学生が実測した高さを比較しました


この後、室内で解析をして、両者の関係をみてると、トドマツでは比較的良い対応が得られましたが、シラカンバやケヤマハンノキでは5~10mも過小評価になりました。
(葉が無いので樹木先端が検出されないため)

比較結果には樹種による違いが・・・

成功する、成功しないケースがあること、さらに、このような特徴を逆手にとって樹種判別や地表面の評価を行う事例について話をしました。

地上部の次は、視点を変えて、牧田先生にサポートいただきながら、樹木やササの根を観察しました。
アカエゾマツをメインに、造林地と天然林を歩きます。初めて森の土を掘る学生もいる中、樹種による根の違いや菌糸との見分け方などを習います。

牧田先生による細根サンプリングの指導

さらに、国内でも珍しいアカエゾマツの湿地林でも調査を行い、数百年前から積もった貧栄養の泥炭地に生きる樹木とその根を観察しました。

根っこだけでなく菌糸も観察。長~~い!


同じアカエゾマツやササでも、斜面と湿地、マウンドと水面下、など、立地の違いで根の形態も大きく変化します。
サンプリングをしながら、可塑性や根の機能、樹木の生き様についても議論しました。


湿地林にて。後ろには樹齢400年くらいのアカエゾマツが

さて、このような森林の地上部・地下部の観測トレーニングを行いつつ、学生たちは、自分の興味のあるものを活発に採取します。

最終日に、興味のある現象について、研究報告を行うところまでがトレーニングなのです。

今回参加した4名は『非破壊測定』や『新しい観察法』といった観点で積極的に興味を広げていきます。針葉や枝、落葉に細根、土壌まで・・・・悪天候の中、時間ギリギリまで精力的に採取しました!

獲物の整理。いろんな落葉を拾い、樹種ごと、分解の段階ごとに並べています

フィールドから戻るとサンプルの解析です。
採取した根や落ち葉を観察して、形や色、いろんな波長の反射や発光、CO2放出速度など、多面的な測定を行います。
得られるデータの意味、それをどのように活かすか・・・講義の合間に、学生間でも活発に意見交換がされました。
(中路は、終盤、この学生達のパワーに圧倒されることに・・・)

高解像度で多波長画像を撮影します
植物や土壌の多様な色に驚きでした



とにかく学生の話し合いが活発で、解析と議論が連日夜半まで続きました・・・・

最終日は4名それぞれが自分が興味を持った現象について、プレゼンテーションを行いました。 
 正味3日間と準備期間も短く、天候も厳しかったのですが、今年の4名はとてもハイレベルな発表を見せてくれました!

凄いポテンシャルの4人(体力もね)


どれも野心的で、秋~冬ならではの面白いテーマです

技術職員も交えて、質疑応答や講評など盛り上がりました
「卒論並みじゃない?」との声も

どのプレゼンテーションも、着想や予想、実験と解析結果について論理的に説明していて、内容も今後の発展が期待されるものでした。
期待通りの結果がでなかった学生が『正直、こんなに悔しいのは初めて。次こそは!』とリベンジを誓っていた点も真剣に取り組んだ結果だと思います。

短い期間でしたが、雨龍の森で得られたこのトレーニングコースの経験・知識が、今後のみなさんの研究に活かされることを願っています!!

活躍を期待しています!