2013年10月14日月曜日

森林保全実習

みなさん、こんにちは。片山です。
今回は、9月 16-20日に雨龍研究林で開催された森林保全実習を紹介します。

今回の実習は、これまでとは少し違います。
まず、北大以外の学生でも受講することができる「森林公開実習」です。
そして、テーマは、「自然科学と社会科学の視点から北海道の自然資源管理を読み解く」 。
現在建設中のサンルダムの見学、下川町の視察、研究林内の泥炭地と蛇行渓流の調査の3本立てで、雨龍研究林を飛び出して、近隣の町を視察するというメニューが組み込まれています。
盛りだくさんの実習でしたので、2日目から4日目を主に紹介していきたいと思います。



2日目


まず、サンルダム建設現場の見学からです。
サンルダムは民主党の脱ダム方針を受けて、本体工事が凍結されていましたが、2012年11月に事業継続が決定され、本体工事が再開されました。
現在、ダムとなる森林を伐採しているところです。
1988年に実施計画が着手されて四半世紀が経ちました。ついに、数年後には完成するとのことです。
そのとき、ここはどの様な景色になっているのでしょうか。



中央を流れる川がサンル川です。
川のまわりの伐採が進んでいます。
サンル川は、天塩川の支流である名寄川に合流します。



サンルダム建設事業所の皆さんに丁寧に説明頂きました。

☆サンルダムオフィシャルWebサイト
http://www.as.hkd.mlit.go.jp/sanrudam/index.html


さて、お昼ごはんの時間です。「下川町地域おこし協力隊」の皆さんによるお弁当です。
地域おこし協力隊とは、総務省が展開している地域活性化プロジェクトです。簡単に言うと、地域活性のために働いてもらう人を、各地方自治体が募集し、総務省がその様な活動を支援しているプロジェクトの様です。

下川町の地域おこし協力隊の方が、「地域食堂」を運営されていて、今回は特別にお弁当を作って頂きました。とっても美味しかったです!
食材はもちろん、下川町で取れたものが中心とのことです。



 ☆地域おこし協力隊について
http://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/

☆下川町 地域おこし協力隊
http://blog.livedoor.jp/ichinohashi07/

ごはんの後は、「下川町役場で働いている方に質問をぶつける!」時間です。下川町は政府がすすめている「総合特区」と「環境未来都市」に選定されています。簡単に言うと、下川町は森林を切り口に地域活性化に取り組んでいて、そのための活動費として国からお金をもらって、全国市町村のモデルとなることを期待されています。
下川町では、町の面積の9割を占める森林を活用して、エネルギー自給率100%を目指しているとのことです。それをどの様に実現していくのかなどの質問がありました。
具体的な取り組みについては、この後見学していきます。





☆総合特区:http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/sogotoc/index.html
☆環境未来都市構想:http://futurecity.rro.go.jp/
☆下川町:http://www.town.shimokawa.hokkaido.jp/index.html


場所は変わって、森林組合の木炭・小径木加工工場にやって来ました。ここのキーワードは「ゼロエミッション」です。トドマツの葉を使ってエッセンシャルオイルを作ったり、小径木の材は燻煙処理をしたり木炭などに加工して、付加価値をつけたうえで販売されていました。燻煙処理された材は、後に紹介するコーポラティブハウスの外壁などに利用され、お洒落な外観に一役買っていましたよ。

現在では、エッセンシャルオイル等を作る部門は独立し、「フプの森」という会社として活動されているそうです。社長は北大出身の女性の方で、千歳から下川町に移住されてきたみたいです。

下川町森林組合では、利用だけでなく、持続的な森林経営の証明であるFSC森林認証にも、積極的に取り組んでいらっしゃいました。


トドマツの葉からエッセンシャルオイルを抽出しています。
燻煙処理をしている現場です。



☆下川町森林組合
http://www.shimokawa.jp/shinrin/
☆フプの森
http://fupunomori.net/about-company/


下川町の視察は、NPO法人「森の生活」の麻生代表理事にコーディネートして頂きました。この日は雨龍研究林に戻り、夕飯を食べた後に、麻生さんから「森の生活」の活動などに関するプレゼンをして頂きました。
麻生さんは、実は北大森林科学科出身で、就職先に関することなどの話も聞けて、学生さんたちにとって、非常に興味深いお話だったと思います。そもそもNPOとは何か?というお話も聞けました。

今回、とてもお世話になった麻生さんです。
※学生さんがとても小さくなったのではなくて、
こどもたちへのイベントの時の写真を拝借させて頂きました。
麻生さんのプレゼンにすっかり夢中になって、
写真を撮るのを忘れていたんです・・・。すいません、、



その夜は遅くまで、麻生さんと学生さんたちで語り合ったそうです!


☆NPO法人 森の生活
http://www.forest-life.org/



さて、そんな濃密な夜が明け、3日目の紹介です。
すでに2日目だけでも盛りだくさんですが、まだまだ実習は続きます。

3日目の午前中は、下川町の「クラスター推進部」の方に、市役所などに利用されているバイオマスボイラーとその原料供給施設、さらには、限界集落に近い状況である一の橋に作られた「一の橋バイオビレッジ」の見学です。
下川町では、エネルギー自給率100%を目指して、バイオマスボイラーを積極的に導入しています。その原料となる支障木を集め、木くずにしている施設を見学しました。
この施設の運営は、もともと町で燃料を売っていたお店の方々に任されているとのことでした。

バイオマスボイラーの燃料となる木材チップを作る施設です。
原料の約6割は、建設現場等で出てきた支障木とのことです。
1年間自然乾燥させたものを粉砕して、ボイラー燃料になるとのことでした。


町役場から車でおよそ20分離れたところに一の橋という集落があります。
1989年まではJR「一の橋駅」もあり栄えていたようですが、今では学校も廃校となってしまいました。その様な一の橋地区で、住民が集まって生活できる変わった町営住宅があります。それが、一の橋バイオビレッジ。
バイオマスボイラーを兼ね備えた下川町の材から作られた木造住宅です。
各家とは屋内廊下で繋がっているので、雪の多い日でも安心して行き来できます。
もともと各世帯が離れて暮らしていたところを、この様に集合して暮らすことで、お年寄りでも安心して生活できる環境が作られていました。
ただ、町から離れているために、やはり買い出しなどは大変不便とのこと。(お年寄りは車を持っていない方が多いようです。)教育施設などもこのあたりにはないことなど、やはり、クリアしなければいけない問題点も知ることが出来ました。

それにしても、こんなオシャレで快適な住宅なら、私も住みたい!


一の橋コレクティブハウス。
とってもオシャレです!
外壁には前日に見学した燻煙処理した木材が利用されています。

☆財団法人 下川町ふるさと開発振興公社 クラスター推進部
http://www.shimokawa-zaidan.jp/


さて、ここでお昼ごはんの時間です。
昨日に引き続き、地域食堂の皆さんによる特別ランチです。
今日のメニューは下川町名産のうどん!
うどんに加え、地域食堂自慢の豚の角煮や、カレーなどが準備されていました。
場所は「ガーデニングフォレストフレペ」という下川町の多目的スペース。カラマツがふんだんに使われた素敵な建物です。

下川町のフレペで臨時出張レストラン!
うどんは下川町の特産品です!

地域食堂の皆さんです。
ちょうど、地域食堂の隊長が不在で、写真を撮ることができず残念です。
とっても美味しい料理をありがとうございました!


とっても美味しかったです!!


☆ガーデニングフォレストフレペ
 http://furepe.com/



さて、午後は下川町森林総合産業推進課の方から町の林業の取り組みについて伺いました。
10年程前から、下川町森林組合は経験者を問わずに募集を行うといった画期的な取り組みを行っていたそうです。
いかに林業・林産業を経済的に自立させるか、それはとても難しい問題ですが、下川町では、例えば高性能林業機械の導入、早生樹の試験植林、国有林との共同施業団地の拡大など、様々な取り組みをされていました。
個人的には、「小さい子供が林業を憧れの職業と思ってくれるようにしたい」という言葉が印象的でした。


町有林を案内して頂きました。




さて、4日目です。
今日は1日、雨龍研究林内を見学&調査です。
3日目の夜に、農学部森林科学科の流域砂防学研究室の教員・院生の皆さんが合流されました。

もともと北海道では森林を伐り開いて放牧や畑作が行われてきました。その開拓の歴史でも、特に泥炭地が大きな障壁だったようです。
泥炭地とは、湿地に集まった分解が不完全な植物遺体の堆積物です。フカフカで水分がおても多く、長靴なしでは歩けません。
この様な泥炭地は、北海道にはたくさん広がっていたのですが、開墾により、今では泥炭地の分布は限られています。
雨龍研究林には泥炭地が広がり、そこを流れる泥川は、開拓以前の北海道の典型的な風景だったようです。




雨龍研究林長の吉田先生に、森林の説明をして頂きました。

泥川の流量調査です。

農学部森林科学科の丸谷先生。
「abandoned channel」について説明されています。

寒いのに川に入ってまで調査をするという熱心な学生さんたち。

なぜ、泥炭地では川は蛇行するのでしょうか?
という疑問を解説される笠井先生(とそれを手伝う院生と見守る丸谷先生)です。


☆北大流域砂防学研究室
http://www.agr.hokudai.ac.jp/formac/sabo/


最終日には、学生の皆さんのプレゼンと泥川調査に関するレポート作成がありました。


最後に下川町についてのプレゼンと、
泥川についてのレポートを作成して実習はおしまいです!



昼も夜も充実した5日間でしたね!





今回は、他大学からの参加者は3人だけでしたが、北大生も他大学の学生さんも、それぞれに刺激を受けたようでした。今後もこの様な、様々な大学の学生さんが交流できる機会を作っていけたら良いなあ、と思います。
その様な場である公開森林実習は、北大以外にも多くの大学で開催されています。ぜひ、参加してみてくださいね!

☆公開森林実習の案内
http://www.fsc.miyazaki-u.ac.jp/foe/

0 件のコメント:

コメントを投稿