2019年9月11日水曜日

琉球大学公開森林実習「亜熱帯林体験実習」

担当:藪原夕里(雨龍研究林・技術職員)

令和元年8月20日(火)~23日(金)の4日間、
琉球大学の与那フィールドにおける公開森林実習「亜熱帯林体験実習」に
同行しましたので、報告します。


1日目(8月20日)

15時に与那フィールド集合のため、辺土名でバスを降り歩いていると、
車で向かっていた琉球大生が声をかけてくれたので、同乗させてもらいました。
道中でも、沖縄の海や川や魚、昆虫、街路樹の観察ができました。

到着後、やんばるの森に位置する与那フィールドで受講生を待ちました。

シーサーに守られた管理棟。お世話になります。
琉球大学5名、宮崎大学1名、鹿児島大学1名、計7名の受講生が集合し、
15時30分から高嶋先生によるガイダンスが始まりました。

ガイダンスでは、沖縄本島の地理や歴史の成り立ちの説明があり、
やんばるの森の代表樹種、林業の今昔、本土復帰前後での木材利用が紹介されました。

本島は世界的にも希少な亜熱帯性常緑広葉樹林で、生物多様性が高く、
2020年の世界遺産登録を目指しておられました。

実習課題でもある「亜熱帯林が広がるやんばる地域での人と自然の共生」と関連した、
地域の人口減少や、観光業での雇用創出、観光客数の増減のお話もありました。

登録候補地となっている与那フィールドの概要も説明され、
今後のフィールドワークの元となる知識が提供されました。


夕食後は、Yambaru Greenの久高奈津子さんによるナイトウォークが開催されました。

これはヤンバルクイナがヤンバルマイマイを食べた跡です。
ナイトウォークでは、オキナワスジボタルの幼虫やクロイワトカゲモドキなど、
沖縄特有の生物を含めて20種ほど確認できました。
カタツムリやオカタニシの種数も多いため、両者の違いをiPadを用いて、
スライドや写真で分かりやすく教えてくださいました。

学生全員が主体的に生物を発見し、楽しみながら学習しました。
鳴き声の種類や数も多く、初日から生物多様性の高さが実感できました。


2日目(8月21日)


朝食前にフィールド構内を散策しただけで、固有種であるノグチゲラや、
ホントウアカヒゲ、オキナワシジュウカラといった亜種がみられました。

2日目最初のプログラムでは、ナイトウォークと同じ道を辿り、森林観察です。
高嶋先生のガイドと、技術職員の外間さん・上原さん・金城さん、TA2人のサポートで進みます。
ガジュマルの気根の説明中。鉢植えでしかみたことありませんでした。
昨夜は観察しにくかった植物や、昼行性の動物がみられるようになりました。
高嶋先生からは、フィールド内の樹木や植物について、沖縄の文化や林業と交えて紹介されました。
また、樹木に害虫が発生しても、生物保全の観点から薬剤散布しにくいという話がありました。

リュウキュウコクタンやスギの植栽地も見学し、沖縄での林業や木材利用について学びました。
さらに、山腹の炭窯跡をみて、以前のやんばるでの里山利用に思いを馳せて森林観察を終えました。
現地ならではのお話も伺うことができ、有意義な時間となりました。

昼食後は、沖縄島北端部の見学に向かいます。

まず、謝敷海岸でサンゴ礁に囲まれた浅い海(イノー)の見学です。
ウミガメの産卵調査地があり、陸海ともに保全が必要な島であることを再認識しました。
海中にサンゴ礁がみえます。

次に、沖縄島最北端の辺戸岬を訪れました。
陸にはクサトベラ、海にはアオウミガメやイラブチャーがいます。

そして、琉球大学里山研究園でシャリンバイ・モッコク・イスノキ・ナギの植栽地を見学し、
高嶋先生から樹種毎に適した施業方法や利用方法が紹介されました。
その他にも、1月に新茶が収穫できるオクミドリの茶畑を見せていただきました。
樹下植栽が良いとされるナギ。
キオビエダシャクの食害がみられます。

最後に、ヤンバルクイナ生息地で野生のヤンバルクイナを観察し、庁舎に戻りました。

夕食は、よんな~館の方々が用意してくださり、
タコライスやそうめんチャンプルー、ゴーヤなどの天ぷら、
青パパイヤのイリチー、冬瓜のお味噌汁が振る舞われました。
豪華な食事、美味しくいただきました。ありがとうございました。

夕食後、松本先生が合流し、亜熱帯の気候や土壌、物質循環の特性の講義がありました。
北海道との比較もしていただき、年間気温の変化の違いに学生も驚いていました。
講義内容を元に、明日、気象サイトの見学をします。

また、私も雨龍研究林について紹介させていただきました。
皆さん、今度は是非北海道にもいらしてください。


3日目(8月22日)

今日は、やんばる全域の見学です。

まず、ヤンバルクイナ生態展示学習施設に向かいます。

実際にヤンバルクイナが間近で観察できる施設で、
ガイドの方が常駐されているので日頃の様子が聞けたり、質問ができます。
展示も充実しており、実習に同行されていた小林さんの学生時代の成果でもある
野生個体の胃内容物に関するポスターなどがみられ、勉強になります。
1代目キョンキョンに代わり、2代目クー太がお出迎え。
学生も、嘴と脚の綺麗な朱色や、顔やお腹の模様、
クー太の行動を、しばらく楽しんでいました。

次に、環境省やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」を訪れます。
はじめに、自然館の概要やヤンバルクイナの保護の歴史、沖縄の固有種、やんばる(山原)を
アクティブレンジャーの方がスライドで説明してくださいました。
今年もロードキルが発生しています。

その後、館内を各自見学し、固有種の剥製や音声を見聞きしたりしていました。
また、琉球大生はストップロードキルのステッカーを自家用車用に付けたりしていました。

そして、ヤエヤマヒルギの北限地にである慶佐次のマングローブ林に移動し、
お弁当を食べて散策しました。
メヒルギ・オヒルギ・ヤエヤマヒルギが近くで観察できます。その他にもシオマネキやハゼがみられます。

最後に、与那フィールド内の森林気象観測サイトや微気象観測タワーに赴きました。

毎木やリタートラップの調査地でもあるサイトでは、
幹や土壌の呼吸量、樹幹流量や樹液流速の測定機器をみながら物質循環について学びました。
また、造林学研究室の学生の調査現場も案内していただきました。
松本先生が亜熱帯林の土壌の特色も教えてくださいました。

そして、微気象観測タワーに登り、やんばるの森を上から観察しながら
風向計や風速計、雨量計、光量子計などについて松本先生が紹介されました。
台風の威力が強い沖縄ゆえに、土台やワイヤーがタワーを強力に支えているのも印象的でした。

プログラム終了後は、実習全体のお疲れ様会が開催されました。


4日目(8月23日)

昨夜の疲れが残りながら、全員レポートとりまとめに励み、提出しました。
7名の受講生は親睦を深めたため、名残惜しい別れとなりました。

全体を通して、日程は適度な余裕があり、フィールドでも水分補給の休憩が適宜設けられ、
食事も地域性や栄養が考慮されており、全員無事に実習を終えることができました。
これも高嶋先生はじめ、スタッフの皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

本実習で得られた知識や実体験は何物にも代えられないものだと感じました。
来年度も、より多くの学生が参加されることを願っています。

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