2018年9月21日金曜日

森林研究フィールドトレーニング「分光技術を使った森林観察~光合成から土壌有機物まで」

森林研究フィールドトレーニング「分光技術を使った森林観察~光合成から土壌有機物まで」
2018年9月5日~9月8日開催@苫小牧研究林

担当:中路


今年のフィールドトレーニングは大変な状況の中、行うことになりました。

前日に非常に強い台風が西日本に上陸して北海道東部を通過したことで、空の便が影響を受け、初日の合流が半日遅れました。
また、2日目の未明に胆振東部地震が発生したため、2日目から3日目の朝まで停電と余震に悩まされました。
幸い、参加者はじめスタッフに怪我等の被害はありませんでしたが、食料の確保、帰りの交通手段など、多くの不安のなか始まりました。



という状況でいきなりバーベキューですが、これは決して遊んでいるわけではありません。
電気とガスが使えない状況のため、2日目は冷蔵庫の中の食材を炭火で焼いて食事にしました。
絶えずラジオで災害情報を聞きながらでしたが、この日は実習で滞在していた信州大学の学生も大勢いて、不安の中にも心温まる食事となりました。


今回の参加者は京都大学と信州大学から来た2名です。


1日目は、フィールドを見学し、夜に分光観測の基礎、応用事例、トレーニング内容について講義しました(まだ電気はきていた)。


2日目は早朝から被害状況の確認、情報収集、安全確保と停電対策・・・大変な状況だったため、当然、トレーニングコースの中止も考えました。

しかし、学生2名は『可能な限り勉強したい』とのこと、安全と交通情報を気にしながらトレーニングを続けました。



森は倒木だらけでしたので、事務所の近くで発電機を使って分光カメラを動かしました。

晴天下と遮光条件の葉を撮影し、解析の教材にしました。
ホワイトボードを使った講義を聞きながら、二人はノートPCで画像をせっせと解析します。
もちろん、照明は自然光。
植物葉の反射スペクトルの計算、Greennessやキサントフィルサイクルに関係する植生指標の解析をしました。
各指標値の光応答や葉身内の分布について、予想と結果について意見を出し合いました。


暗闇の中でカレーを食べます
夕食はランタンをつかってカレーライスです。
この後、信州大学の学生が乗るフェリーが無事に出港できると聞き、みんなで港に見送りに行きました。

一部の施設以外は市内の街灯・信号は消えており、異様な雰囲気でした。
星がとても良く見えたのは東日本大震災以来です。
普段なら、夜もレクチャーをしますが、この日は地震当日ということもあり、早めに就寝となりました。


3日目は、朝から電気が復旧しました。
被害状況もだいぶ判明し、二人の帰路も大丈夫そうという事で、いくぶん明るくトレーニング開始です。

この日は、各自の興味・仮説ににあわせたデータを取得し、解析、取りまとめをするメニューです。
非常にハードでしたが、二人とも精力的にがんばります。


信州大学の田村さんは樹木細根の形態と反射スペクトルの関係をテーマにしました。
台風の影響でいたるところに根返りを起こした倒木があります。
これを利用して、内生・外生菌と共生する樹木根を集めていきます。

京都大学の野口君は、台風の攪乱の影響をリモートセンシングデータから解析したいのこと、衛星データや各地のフェノロジー観察カメラのデータを収集します。

夜は市内の食堂で夕食をとり、ひたすらプレゼンテーションの作成です。
こちらが音をあげるほど、二人の気合が凄く・・・午前3時くらいまでやった模様です。


最終日、成果発表です。
土曜日だったため観衆は大学院生だけでしたが、かなり面白い内容で、意見も出て盛り上がりました。


田村さんの発表では、樹木の種別、細根の太さでどうスペクトルが変わるのか報告がありました。
(詳しくは書けませんが)新しい観察手法の開発や分類などに可能性が示唆される内容でした。
卒論でも樹木細根を研究したいとのこと、今後に期待です。


野口君は林冠のGreennessを指標化し、気象データとの関連性について発表してくれました。
台風に注目し、攪乱影響の不可逆性、地域間の違いなど、学部2年生とは思えないほど、質疑応答もしっかりしていました。
リモートセンシングデータを使った、気候変動が生態系サービスに与える影響の検出は今後も重要な研究テーマになるはずです。



最後に森林資料館の見学をして、解散です。
空港に行く前に、港の海鮮屋が店を開けてくれてたので(滞在中、厳しい環境だったと思いますが)最後は満足して帰路につけたのではないかと思います。

今後も、森林の営みを観察し興味深いテーマに取り組んでほしいと願っています。
縁があれば北大にまた来てもらいたいですね。

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