2016年10月5日水曜日

森林研究・フィールドトレーニング「林冠の生物多様性と機能」

長田です。今回は、8月29日〜9月1日にかけて、苫小牧研究林において行われた森林研究・フィールドトレーニング「林冠の生物多様性と機能」について紹介します。




 この森林研究・フィールドトレーニングは、北海道大学研究林において、少人数で「一歩深く」学ぶための実践的な研究体験プログラムです。昨年度から開始し、今年も5つのテーマでおこなわれています(昨年度の内容についてはここここここを参照してください)。日浦勉先生と私が担当する「林冠の生物多様性と機能」では、苫小牧研究林の特徴を活かした林冠研究をテーマとしています。とくに、林冠クレーンやジャングルジムを使うことで、森林生産の大部分をにない生物多様性が集中する林冠での研究を体験するという試みで、日本では苫小牧研究林でしか行うことのできない貴重なものです。この実習には、北海道大学と岡山大学から4人の学生さんが参加しました。

8月29日(初日)

午前10時に苫小牧駅(または南千歳駅)に集合した後に、研究林にはどのような設備があり、どんなことが出来るかを考えてもらうために、研究林内を一通り解説してまわりました。ジャングルジム〜シカ柵〜フラックスタワー、窒素施肥区〜日本全国のブナの移植実験サイト〜林冠クレーンとまわり、各自が自分のやってみたいテーマを考えました。

ジャングルジムを前に日浦先生の説明を聞きます
シカ柵についての説明です 
全国のブナが移植されているサイトでは、実際に葉や枝を手にとって南と北のブナの違いを確認します
クレーンの説明を受けます
実際にクレーンに乗り、どのような林冠調査ができるかを考えます
クレーンからの眺めです。いい天気ですね

昼食後に日浦先生と私が研究林や研究の考え方について紹介した後、各自が自分のしたい研究テーマを発表しました。学生の皆さんが考えたテーマは、「窒素施肥区でミズナラの落葉が早い理由について」「シカによる摂食が樹木の葉の形質および葉の虫害に与える影響について」「林冠の環境による当年枝形態の変化について」「林冠の構造と昆虫多様性の関係について」の4つです。これらのテーマに基づいて、実習期間中に何をどこまで調べることができるかを確認するために、夕方に再度森林に入って考えました。

日浦先生による発表を聞きます 
試しに取ってきた枝葉を見て何が出来るかを考えます
夜には虫好きの学生さんがライトトラップを仕掛けていました。元気いっぱいでいいですね。
楽しそうですが、何をしているかわかりますか?

8月30日(2日目)

さっそく調査開始です。私は2人の学生さんと一緒にクレーンで林冠調査のお手伝いをしました。あくまで学生さんが主体的に考えて動き、教員はそれを補佐するという形です。学生さんが考えた場所で、ウィンドウトラップを設置したり、ビーティングして虫を採ったり、枝を採取したりしました。

林冠にウィンドウトラップを設置します。結構重いので大変です

林冠にトラップが見えます。こんなことが出来るのも苫小牧研究林ならではですね

枝を叩いて落ちてきた虫を捕まえます

枝葉のサンプルも少しだけ取ります
午後は、とったサンプルをひたすら解析します。虫を同定したり、葉面積を計ったり…たくさんサンプルを取るほど作業が大変になります。この日の夜には台風が北海道に来たため、携帯から警報が鳴り響いたりする状況でしたが(苫小牧でも沿岸の一部地域では避難警報が出ましたが、研究林ではほとんど被害はありませんでした)、学生さんは夜遅くまで作業をしていました。

たくさんのサンプルを前にして、ひたすら解析します
各自自分のテーマに沿って賑やかに作業を進めます
たくさんの図鑑を使って採った虫を同定します 
スキャナで葉の画像を取り込んで葉面積を測定します

8月31日(3日目)

ウィンドウトラップを回収したり補足データをとったりするために再びクレーンで作業しました。台風の影響でトラップではあまり虫を捕まえることができなかったようですが、ゴンドラから巻き尺を伸ばして調査した位置の高さを測定したり、大まかな光環境や風速を測定しました。そして、午後からは解析とプレゼンの準備を行いました。この日も深夜まで作業が続きました。

入力するデータもかなり多いです
パワーポイントで発表ファイルを作ります

9月1日(最終日)

朝から発表会です。皆さんがまとめ上げた立派な発表が続きます。質疑応答も活気がありました。はじめての、そして短期間の調査だったので、うまく行かなかったところもあったと思いますが、自分なりに試行錯誤してデータを取り、まとめ上げるという作業をとおして様々なことを学ぶことができたかと思います。

皆さんの発表の様子です。

最後に日浦先生から総括がありました。皆さんお疲れ様でした。

日浦先生によるまとめです。
最後に集合写真です









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