2019年10月17日木曜日

信州大学「自然の成り立ちと山の生業演習」に参加してきました

苫小牧研究林 奥田篤志

2019年9月10日から信州大学農学部 手良沢山ステーションと西駒ステーションで開催された公開森林実習「自然の成り立ちと山の生業演習」に技術スタッフとして参加しました。当日入りが難しかったので、台風15号の影響が残る羽田空港から東京に前日入りし、高速バスで長野県南箕輪村の信州大学農学部に向かいました。13:00に講義棟21番教室に集合しました。

受付終了後、小林先生から実習のガイダンスを受け、3班に分かれて翌日の森林観察(登山)のための地形図の準備などを行いました。続いて荒瀬先生から今回の実習のフィールドとなる西駒ステーションと手良沢山ステーションの概要と沿革、自然環境などの紹介がありました。その後、宿泊場所への移動まで時間ができたため、夕食後に予定していたアカデミックアワーを前倒しして、約1時間程度北大研究林と仕事の紹介をさせてもらいました。

西駒ステーションの説明をする荒瀬先生

  登山中の行動食を配るTAの学生

バスで手良沢山ステーションの学生宿舎に移動し、TA3名の指示に従って3つの班が日替わりで夕食と明日の朝食の準備をおこなうなど、取り決めとルールの説明があった。続いて翌日の植生観察(登山)中の行動食(昼食含む)を配り、1班が作った夕食を頂き初日の日程を終えた。

 
11日は朝から西駒ステーションに移動して標高1,250mから2,200m付近までの、里山として利用されてきた森林の植生の変化や、造林地など利用の変遷を観察した。標高2,000mの山が「里山」という感覚は北海道の山しか経験が無い自分にはとても新鮮でした。

小林先生を先頭に植生観察をしつつ山小屋へ

最後に靴を脱いでの沢渡りも・・・
12日は1989年から94年にかけて植林されたヒノキ林の間伐作業をおこなった。3,000本/haから1,500本/haに間伐し、侵入した広葉樹も除伐しました。初めて鋸を使う学生も多く、30度を超える急傾斜地での作業に苦労していた。

間伐前

作業の様子

   間伐後(すっかり明るくなった)
間伐の後は薪割。チェンソーの使い方を一通り説明して、で玉切りの練習をした後はひたすら斧で薪を割っていく。始めはぎこちなかったが、気持ちよく割れるようになると薪割が病みつきになるようで、遅くまで割り続けるグループもあった。


割った薪はきれいに積んで乾燥

この日の夕食は薪を使ってバーベキュー。ヒノキの薪を燃やした煙の香りが心地よく、とてもおいしく感じられました。

13日、最後の朝食の後は宿舎の掃除を済ませて、バスで農学部の講義室へ移動。間伐調査のデータ集計とレポート、アンケートの作成。丁度お昼で終了となりました。
何とかお天気にも恵まれ、すべての日程を無事に終了できました。12日の昼のお弁当以外すべて学生たちの自炊という実習もなかなか良いものだと思いました。地元食材にこだわり、獲物や収穫物を取り入れるとより楽しめるかもしれないと感じました。

2019年9月11日水曜日

第6回森林フィールド講座・四国編





学術研究員の奥崎です.

2019年9月2日~6日に高知大学嶺北フィールドにて開催されました「第6回森林フィールド講座・四国編」についてご紹介します. 「森林フィールド講座」は学年・学部を問わず,全国の大学生が参加可能な森林初学者向けの実習です.


今回は森林率が高く,古くから林業の盛んな高知県を舞台として,森林の調査と施業を体験する実習です.中国・四国地区大学間連携フィールド演習ならびに全国大学演習林協議会公開森林実習との同時開催となり,全国から29名の学生が参加してくれました.

1日目(9月2日)



まず高知駅から北に向かい,「ばうむ合同会社」にて若手林業家,川端さん(山番有限責任事業組合)と立川さん(地域おこし協力隊)から嶺北地域での林業や生計の立て方についてお話をしていただきました.


穴内川ダムに面する宿舎に着いたら,バーベキューです.お肉のほかに鰹とナスのたたきなど高知の名物を楽しみました.


2日目(9月3日)



いよいよフィールドワークのスタートです.演習林の説明を受けた後,林内に調査区画を作ります.




急斜面に加え,初めて使うポケットコンパス(方位磁石と望遠鏡を組み合わせた測量機器)で苦戦しながらも,無事に水平距離で10×10 mの区画を作成できました.




宿舎に戻ってからは,方位角と高低角から区画内の樹木の位置を作図しました.




夕食後はアカデミックワールドです.今回の森林フィールド講座には全国各地の連携校(北海道大学,山形大学,筑波大学,琉球大学)から教職員が参加しており,それぞれの大学の研究林・演習林での研究や活動を紹介しました.この日は奥崎が北海道の植生と昆虫の関係を,山形大学の菊池先生が上名川演習林を活用した教育と庄内地方の特色について紹介しました.


3日目(9月4日)


昨日作った区画内の樹種を調べます.よく似た樹木があるため,結構難しいです.



背の高い樹木は鎌つきの測桿で葉を採集して同定します.


午後は伐倒調査です.職員さんがチェンソーで切り倒した樹木を幹,枝,葉に分けて,それぞれの重さを測定します.



その途中でまさかの夕立,ブルーシートで雨宿りしました.



その夕立のため,野焼きは中止です.晴れていれば,ここで野焼きを体験できたのに残念.



この日のアカデミックワールドでは,筑波大学の遠藤さんから井川演習林の崩壊地と獣害対策について,琉球大学の上原さんから与那フィールドの自然環境と固有種について解説してもらいました.


4日目(9月5日)


これまでの植生調査から得られたデータをもとに,過去に人々がどのように山を利用していたのか,そして今後どのようになっていくのかを班ごとに発表しました.


午後は牧野植物園の見学です.高知の暖温帯から冷温帯にかけての植生が見事に再現されていました.


最後は高知駅で解散です.山の中での長い実習でしたが,全員元気にやり遂げることができました.次回は北海道大学の研究林で開催予定です.今回参加された方,そしてまだ参加したことない方のご参加を心よりお待ちしております.


最後に高知大学の教職員とTAの皆さん,たくさんの実習プログラムに加えて,美味しい食事に温かいお風呂をありがとうございました.

琉球大学公開森林実習「亜熱帯林体験実習」

担当:藪原夕里(雨龍研究林・技術職員)

令和元年8月20日(火)~23日(金)の4日間、
琉球大学の与那フィールドにおける公開森林実習「亜熱帯林体験実習」に
同行しましたので、報告します。


1日目(8月20日)

15時に与那フィールド集合のため、辺土名でバスを降り歩いていると、
車で向かっていた琉球大生が声をかけてくれたので、同乗させてもらいました。
道中でも、沖縄の海や川や魚、昆虫、街路樹の観察ができました。

到着後、やんばるの森に位置する与那フィールドで受講生を待ちました。

シーサーに守られた管理棟。お世話になります。
琉球大学5名、宮崎大学1名、鹿児島大学1名、計7名の受講生が集合し、
15時30分から高嶋先生によるガイダンスが始まりました。

ガイダンスでは、沖縄本島の地理や歴史の成り立ちの説明があり、
やんばるの森の代表樹種、林業の今昔、本土復帰前後での木材利用が紹介されました。

本島は世界的にも希少な亜熱帯性常緑広葉樹林で、生物多様性が高く、
2020年の世界遺産登録を目指しておられました。

実習課題でもある「亜熱帯林が広がるやんばる地域での人と自然の共生」と関連した、
地域の人口減少や、観光業での雇用創出、観光客数の増減のお話もありました。

登録候補地となっている与那フィールドの概要も説明され、
今後のフィールドワークの元となる知識が提供されました。


夕食後は、Yambaru Greenの久高奈津子さんによるナイトウォークが開催されました。

これはヤンバルクイナがヤンバルマイマイを食べた跡です。
ナイトウォークでは、オキナワスジボタルの幼虫やクロイワトカゲモドキなど、
沖縄特有の生物を含めて20種ほど確認できました。
カタツムリやオカタニシの種数も多いため、両者の違いをiPadを用いて、
スライドや写真で分かりやすく教えてくださいました。

学生全員が主体的に生物を発見し、楽しみながら学習しました。
鳴き声の種類や数も多く、初日から生物多様性の高さが実感できました。


2日目(8月21日)


朝食前にフィールド構内を散策しただけで、固有種であるノグチゲラや、
ホントウアカヒゲ、オキナワシジュウカラといった亜種がみられました。

2日目最初のプログラムでは、ナイトウォークと同じ道を辿り、森林観察です。
高嶋先生のガイドと、技術職員の外間さん・上原さん・金城さん、TA2人のサポートで進みます。
ガジュマルの気根の説明中。鉢植えでしかみたことありませんでした。
昨夜は観察しにくかった植物や、昼行性の動物がみられるようになりました。
高嶋先生からは、フィールド内の樹木や植物について、沖縄の文化や林業と交えて紹介されました。
また、樹木に害虫が発生しても、生物保全の観点から薬剤散布しにくいという話がありました。

リュウキュウコクタンやスギの植栽地も見学し、沖縄での林業や木材利用について学びました。
さらに、山腹の炭窯跡をみて、以前のやんばるでの里山利用に思いを馳せて森林観察を終えました。
現地ならではのお話も伺うことができ、有意義な時間となりました。

昼食後は、沖縄島北端部の見学に向かいます。

まず、謝敷海岸でサンゴ礁に囲まれた浅い海(イノー)の見学です。
ウミガメの産卵調査地があり、陸海ともに保全が必要な島であることを再認識しました。
海中にサンゴ礁がみえます。

次に、沖縄島最北端の辺戸岬を訪れました。
陸にはクサトベラ、海にはアオウミガメやイラブチャーがいます。

そして、琉球大学里山研究園でシャリンバイ・モッコク・イスノキ・ナギの植栽地を見学し、
高嶋先生から樹種毎に適した施業方法や利用方法が紹介されました。
その他にも、1月に新茶が収穫できるオクミドリの茶畑を見せていただきました。
樹下植栽が良いとされるナギ。
キオビエダシャクの食害がみられます。

最後に、ヤンバルクイナ生息地で野生のヤンバルクイナを観察し、庁舎に戻りました。

夕食は、よんな~館の方々が用意してくださり、
タコライスやそうめんチャンプルー、ゴーヤなどの天ぷら、
青パパイヤのイリチー、冬瓜のお味噌汁が振る舞われました。
豪華な食事、美味しくいただきました。ありがとうございました。

夕食後、松本先生が合流し、亜熱帯の気候や土壌、物質循環の特性の講義がありました。
北海道との比較もしていただき、年間気温の変化の違いに学生も驚いていました。
講義内容を元に、明日、気象サイトの見学をします。

また、私も雨龍研究林について紹介させていただきました。
皆さん、今度は是非北海道にもいらしてください。


3日目(8月22日)

今日は、やんばる全域の見学です。

まず、ヤンバルクイナ生態展示学習施設に向かいます。

実際にヤンバルクイナが間近で観察できる施設で、
ガイドの方が常駐されているので日頃の様子が聞けたり、質問ができます。
展示も充実しており、実習に同行されていた小林さんの学生時代の成果でもある
野生個体の胃内容物に関するポスターなどがみられ、勉強になります。
1代目キョンキョンに代わり、2代目クー太がお出迎え。
学生も、嘴と脚の綺麗な朱色や、顔やお腹の模様、
クー太の行動を、しばらく楽しんでいました。

次に、環境省やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」を訪れます。
はじめに、自然館の概要やヤンバルクイナの保護の歴史、沖縄の固有種、やんばる(山原)を
アクティブレンジャーの方がスライドで説明してくださいました。
今年もロードキルが発生しています。

その後、館内を各自見学し、固有種の剥製や音声を見聞きしたりしていました。
また、琉球大生はストップロードキルのステッカーを自家用車用に付けたりしていました。

そして、ヤエヤマヒルギの北限地にである慶佐次のマングローブ林に移動し、
お弁当を食べて散策しました。
メヒルギ・オヒルギ・ヤエヤマヒルギが近くで観察できます。その他にもシオマネキやハゼがみられます。

最後に、与那フィールド内の森林気象観測サイトや微気象観測タワーに赴きました。

毎木やリタートラップの調査地でもあるサイトでは、
幹や土壌の呼吸量、樹幹流量や樹液流速の測定機器をみながら物質循環について学びました。
また、造林学研究室の学生の調査現場も案内していただきました。
松本先生が亜熱帯林の土壌の特色も教えてくださいました。

そして、微気象観測タワーに登り、やんばるの森を上から観察しながら
風向計や風速計、雨量計、光量子計などについて松本先生が紹介されました。
台風の威力が強い沖縄ゆえに、土台やワイヤーがタワーを強力に支えているのも印象的でした。

プログラム終了後は、実習全体のお疲れ様会が開催されました。


4日目(8月23日)

昨夜の疲れが残りながら、全員レポートとりまとめに励み、提出しました。
7名の受講生は親睦を深めたため、名残惜しい別れとなりました。

全体を通して、日程は適度な余裕があり、フィールドでも水分補給の休憩が適宜設けられ、
食事も地域性や栄養が考慮されており、全員無事に実習を終えることができました。
これも高嶋先生はじめ、スタッフの皆様のおかげです。本当にありがとうございました。

本実習で得られた知識や実体験は何物にも代えられないものだと感じました。
来年度も、より多くの学生が参加されることを願っています。

2019年7月11日木曜日

森林圏学特論Ⅲ@雨龍研究林


森林圏科学特論Ⅲ&フィールドドレーニング

技術補佐員の大島です。

今年も2019年6月10日~13日に雨龍研究林で大学院生対象の「森林圏学特論Ⅲ」が行われました。今回ははじめての試みとして全国の学部生を対象とした森林研究のフィールド・トレーニングも兼ねての実習となりました。
森林研究・フィールドトレーニング ←詳細はこちら
 この実習では、野生動物に関する科学的な調査法を体験、それらの生態学的な理論を学び、調査結果をまとめる一連の作業を通じて、理論・データ・解析・議論の関係など研究に関わる一連のプロセスについての理解を深めることを目標としています。

幌加内町母子里にある雨龍研究林
【1日目】
到着後、早速研究林内に向かい、まずは“ハリガネムシ”についての説明を受けます。
なんと、陸生昆虫に寄生して、その行動をコントロールするという虫・・・
それによって昆虫が魚類のエサにもなっているとか。自然界は複雑に絡み合っているのですね。 全員で周辺を探します。ハリガネムシや寄生されている虫は見つかるでしょうか??

 いたようです! ただの糸ではありません。宿主から出てきたハリガネムシがこちら。


場所を移動して、今度はネズミのトラップを仕掛けに行きます。
ネズミが通りそうなところに仕掛けて。明日はかかっているといいなぁ~

 そしてお次は、林内に設置されている赤外線カメラの回収。動物は映っているかな??

 作業はまだ終わりません。周辺のクローバーの葉を採取します。

 庁舎に戻り、回収してきたカメラの画像解析やネズミの頭数調査についての講義。

 赤外カメラにはシカ、ネズミ、コウモリ、人間などが写っていました。


 夕食は楽しく団欒タイム初日はトンカツのボリュームご飯です。
よく動いたのでみなペロリ、でしたね?!

夜は、班毎に解析した赤外カメラからのベストショット!を発表
この後、暗闇の中シカのライトセンサス(周辺のシカ調査)に向かいました。
遅い時間まで盛りだくさんの実習です。


【2日目】 

この日は早速、昨日しかけたネズミトラップを確認しに行きました。
ともにトラップに入っていた 左:エゾアカネズミ 右:エゾヤチネズミ
捕獲したネズミにはマーキングをして、フィールドに放しました。

 午後はブトカマベツ川で魚類調査実習です。魚を釣り上げる・・・のではなく、電気ショッカーで一時的に麻痺した魚を捕獲して調査します。

 ヤマメを観察用のミニ水槽に入れて、じっくりと観察。


 朱鞠内湖へそそぐ河口付近へ移動し、川の太さによって生息している魚の大きさがどのように違うかを見ます。仕掛けられた定置網には30センチを超えるウグイがかかっていました。 ウェーダーを着ていると、川の中を自由に歩き回れます。

 講義室に戻って、前日採取したシロツメクサの葉の実験の準備にとりかかりました。
動物の食害に対する植物の対抗適応を知るため、既にデータのある北大構内と札幌市内のシロツメクサと比べ、その成分に違いがあるかを調べます。

夕食をはさんで、結果が出ました。幌加内町のシロツメクサは他地域のものに比べて青酸反応のある個体は少ないようでした。

この日の夕食はハンバーグとエビフライ。豪華です♪

【3日目】
最後のフィールドワークは、河川でのベントス(底生生物)調査です。
川底の石を拾い上げ、付着している生き物をひとつひとつピンセットで収集します。
時折霧雨のぱらつく寒い気候の中、頑張りました。研究には体力・気力も必要ですね。

持ち帰った無脊椎動物試料を講義室で分類します。トンボやカゲロウなど陸生昆虫の幼虫もいれば、水生昆虫、一見小石にしか見えない生物もいるようでした。

最後の夕食はジンギスカン!ここでしっかり体力を回復して、明日の課題発表に備えます。
この後、夜中過ぎまで課題に取り組んだ班もあったようです。

【4日目】
いよいよ最終日です。
 今回の実習で収集したデータやその他の課題を班毎に解析、考察し、プレゼンテーションを行いました。
各班、力の入った発表で質疑応答も飛び交います。
時間をいっぱいまで使った課題発表をもって、4日間の実習は締めくくられました。
それぞれ異なった研究テーマを抱えた学生ですが、今回の実習を今後の研究生活に存分に生かしてくださいね!

この実習の担当教員
内海 俊介:内海研HP
揚妻 直樹:けだもの研究室
岸田 治 :岸田研HP