2014年6月24日火曜日

虫捕り少年、苫小牧に現る!

今回は3カ月以上も苫小牧に滞在して調査を進めている飯田さんの紹介です。飯田さんは東京農工大の4年生の虫捕り少年。筋金入ってます。虫好きオーラ、半端ないです!

飯田さんは、シカの生息密度が昆虫の種や生息数に与える影響を調べています。最近、シカの増加が社会的問題になっていることは皆さんもご存知だと思います。シカが増えるとシカの餌となる植物(特に林床に生えている林床植生)が食べられてしまいます。それにより、昆虫の多様性や数も変化すると考えられます。それを明らかにしようとしているのですね。

では、どうやって調べるのでしょうか?

飯田さんは、色々なトラップを使って、様々な虫を採取しています。


トラップその1:ピットフォール作戦・・・オサムシ、シデムシなどを捕まえる!
いわゆる、落とし穴です。地面を少し掘って、そこにコップなどを設置し、落とし穴を作ります。地面を歩く虫たちは、この落とし穴に落ちちゃいます。とっても簡単なトラップですが、モニタリングサイト1000という全国的な森林調査でも利用されている手法です。このトラップでは、オサムシやシデムシが採れるみたいです。


この白いのがピットフォールです。
今回は調査中ではなかったので、蓋がされていました。


トラップその2:ライトトラップ作戦・・・蛾を捕まえる!
今回、同行した調査です。夜間、光に集まる虫を捕まえるためのトラップ。その名のとおりですね。



飯田くんが何やら作り始めました。
みるみるうちに、ライトトラップ完成!
真ん中にライトを設置して、集まってきた虫たちは下の方にトラップされます。
そして、翌朝、回収します。

今回のライトトラップの狙いは「蛾」です。
今の時期は、たくさんの蛾が採れるみたいです。


トラップその3:誘引衝突式トラップ作戦・・・カミキリムシを捕まえる!
このトラップも自作です。カミキリムシを捕まえます!


上の方のUFOみたいな物体の中に、
カミキリムシが好きなにおいのする誘引剤を入れておきます。
そうすると、フラフラ~っと寄ってきたカミキリムシが壁に衝突して、
エタノールの入った下のごみ箱に落ちて捕獲されます。



トラップその4:マレーズトラップ作戦・・・ハチを捕まえる!
今回は残念ながらトラップをかける期間ではなかったので、見ることができませんでした。マレーズさんが考案したマレーズトラップは、テントのような構造で、ハチを捕まえることが今回の目的とのことです。



シカ密度の異なるプロットで、トラップを仕掛ける!
さて、これら4種類のトラップを、シカ高密度区(20頭/㎞2)、シカ排除区(0頭/㎞2)、処理なし区(10頭/㎞2)の3つの種類のプロットにしかけて、虫の種類や数を調べます。今回は、トラップその2のライトトラップ作戦に同行しました。



ここはシカ高密度区です。
この区域は柵で囲まれていて、

研究のために、毎年シカの頭数をチェックして、頭数をコントロールしています。
ここは外の森林に比較すると、シカの生息密度が2倍になるように
設定しているプロットです。


ここは、柵外、つまり、何もコントロールしていない森の様子です。
上の写真のシカ高密度区に比べるとシカが少ないので、林床植生が多いですね。

左右の違い、分かりますか?
真ん中のポールは、奥まで柵がはってあります。
右側は、シカ高密度区で、柵内には2頭のシカがいます。
左側は、シカ排除区で、柵内にはシカはいません。
林床の様子が全く違いますね。
こんなに林床植生が違うのであれば、生息する虫たちも違うような気がしますね。

こちらはシカ排除区、つまり、シカが一頭もいないプロットです。
下層植生がたくさん生えているのが分かりますか?

ちなみに、虫はLEDの光には集まってきません。
最近のキャンプ道具は、のきなみLEDを利用しているとのことで、
蛍光灯のランプを手に入れるのが大変みたいです。


3つのプロットに3つずつのトラップを仕掛けました。たくさん捕れるかな~??

翌朝・・・



うわー!!!たくさんいるー!!!!

色んな蛾の種類が捕れました。
綺麗ですねえ~!

たくさんれたのはいいけれども、
蛾の種類に分けて、数える作業が大変です。
昼ごはんも食べず、1日中作業をして、
やっと夜7時頃、終わったみたいです。
この後の同定作業はもっと大変みたいです。

虫捕り少年飯田くんは5月はじめからずーっと苫小牧に滞在していて、8月頃まで調査を続ける予定とのこと。もう、日浦研究室の一員のようです。本当に虫が好きで、平日これだけ虫採りしているのに、休日は趣味で研究林外にも虫捕りに出かけているみたいです。(詳しくは、彼のブログタイヤキの虫ブログをご覧ください!これを見ると、本当に筋金が入っていることがよく分かると思います。笑)

飯田くんに「一番好きな虫は何ですか?」と聞いたところ、「それは答えられません!!!!」と言われてしまいました。でも、特にカミキリムシが好きみたいです。北海道に来て出会った虫で一番好きなのは「オオルリオサムシ」とのことです。北海道に来たのに、オオルリオサムシをらないなんて、虫屋さんにとってはありえないことみたいです。笑

ところで、このオサムシ、とっても人気の高い昆虫みたいです。その魅力のひとつに、オサムシの体はとっても綺麗な色をしている、ということがあると思います。「歩く宝石」とも言われているみたいですね。オサムシは飛ぶことができないので、高い山や川があると、移動できずに、その土地固有の進化をとげるとのことです。ですので、日本だけでも約40種(100以上もの亜種)がいるとのことです。

ちなみに、オオルリオサムシは北海道だけに生息するようですが、場所によって体色が異なるみたいです。また、同じ場所でも異なる体色のオサムシがいるみたいです。なぜ、この様に様々な色をもつようになったのか、不思議ですね~。



虫捕りのあとは、データ解析や論文執筆など、研究は道のりが長いですが、どんな結果になるのかとっても楽しみですね!!

2014年6月13日金曜日

土の健康診断とポドゾル!


こんにちは、片山です。今回は中川研究林で行われた北大修士1年生向けの実習の紹介です。今回は後半の実習内容を紹介したいと思います。(前半の主な内容は、去年の様子をご覧ください。)

今回の(このブログ記事の)テーマは”土”です。植物は、生きていくのに必要な栄養や水を土から吸収しているので、なくてはならないものです。では、どこの土にたくさんの栄養が含まれているのでしょうか?また、土の種類にはどの様なものがあるのでしょうか?

というわけで、土にどれだけの栄養があるのかを調べます。もちろん、見るだけでは分かりません。ですので、文明の利器を使って、化学分析をします。土には色んな種類の栄養が含まれていますが、今回調べるのは「窒素」です。窒素は植物にとっては必要不可欠で、必要な量も一番多い栄養素です。今回は色々な面から土に含まれる窒素の量を比較していきます。みなさんも、答えを予想してみてください!



★場所の比較★
森林と牧草地では、どちらの土にたくさんの窒素が含まれているのでしょうか?

今回は、前日に森林(天塩フラックスタワー)からとってきた土と、天塩研究林付近にある牧場の草地から取ってきた土を比較します。


★深さの比較★
土の浅いところ(表層)と深いところでは、どちらの方がたくさんの窒素が含まれているのでしょうか?

今回は0(土壌表面)-10㎝の深さ、10-20㎝の深さ、20-30㎝の深さで土壌を採取しました。


★形の比較★
窒素、といっても、プラスの電荷を帯びたアンモニウム態と、マイナスの電荷を帯びた硝酸態の窒素の2種類があります。どちらの形でたくさん存在しているのでしょうか?

今回は(有機体の窒素は考慮せず)、ふたつの窒素の形を分けて分析します。


分析が始まりました!


採取してきた土壌に薬品を入れ、土壌に吸着している窒素を溶かしていきます。
1時間、土と薬品(塩化カリウム)が入った容器を振り続けなければならないのですが、
5分程度は自分で振って、あとは機械にお任せです♪

分析に必要な薬品を5種類作っていきます。
もちろん、「猛毒」の薬品も使いますので、細心の注意を払って作っていきます。
土をろ過して、窒素が溶けた水を取り出します。
この水を分析します。
どうやって窒素の量を測るかというと、アンモニウム態、硝酸態それぞれにおいて
ある化学薬品と反応させることで発色させ、
その色の濃さを調べることにより、目的の物質の濃度を推定します。

これが今回の主役、「オートアンライザー」です。
カレはとっても有能なので、全国からたくさんの研究者が
分析するために集まって来ます。

さてさて、うまく分析できるかな?!

分析は機械がやってくれるので、私たちは賭けクイズを始めてみました。
全部で13問。教員4人も含めて、分析結果を予想します。
上位者には教員よりアイスをプレゼント!みんな真剣に考えています。

なぜ、その様に考えたかもディスカッションしました。

そのクイズの一部が冒頭の疑問です。

問1:森林と牧草地(0-10㎝)では、どちらの方が窒素含有量が多いでしょうか?

問2:表層(0-10cm)、真ん中(10-20cm)、下の層(20-30cm)のどこの層に一番たくさんの窒素が含まれているでしょうか?

問3:アンモニウム態と硝酸態、どちらの形の窒素がたくさん含まれているでしょうか?



みなさんの答えは決まりましたか?
それでは、分析の結果を見てみましょう!








こたえあわせ!

問1:森林と牧草地(0-10㎝)では、どちらの方が窒素含有量が多いでしょうか?

→答えは、森林です!
これは、とってもびっくりした結果となりました。教員全員、牧草地と答えていました。普通は、牧草地にはたくさんの肥料(つまり窒素)をまくので、牧草地にはたくさんの窒素が含まれているはずなのですが、答えは逆になりました。

今回だけの結果では明確なことは言えませんが、土壌の種類(土性)の違いが効いているのではないか、ということです。牧草地の土は砂っぽかったので、窒素が付着しにくく、流れてしまったのかもしれない、という可能性が指摘されました。また、肥料がまだまかれていなかったのかもしれません。


問2:表層(0-10cm)、真ん中(10-20cm)、下の層(20-30cm)のどこの層に一番たくさんの窒素が含まれているでしょうか?

→答えは、森林、牧草地ともに0-10㎝でした!
一般的に窒素がどのように土壌に供給されるかというと、リター(落葉・落枝・枯死根)の分解や、雨に溶けて土壌に供給されます。そして、窒素は土壌中の有機物に保持されるので、供給場所、滞留場所ともに表層が大きな役割を担うと考えられます。ちなみに、土壌表層に存在する窒素はアンモニウム態が圧倒的に多いみたいです。硝酸態窒素は水に溶けやすいので、より下層に浸透していくとのことです。


問3:アンモニウム態と硝酸態、どちらの形の窒素がたくさん含まれているでしょうか?

→答えはアンモニウム態窒素でした!5倍くらい、アンモニウム態窒素が多い結果となりました。この理由としては、窒素が乏しい環境では、アンモニウム態窒素をめぐって微生物、植物が競争をしており、硝酸に変える働きをする微生物は、その競争において立場的に弱いことや、硝酸態窒素ができてもすぐに使われてしまうためと考えられます。しかし、大都市近くなど工場や排ガスなどから排出された窒素が大気からたくさん降ってくる場所では、どんどん硝化が起こり、硝酸態窒素が土壌中にたまっていくといわれています。



12問中5問正解した学生さん3人が優勝でした!めでたく、アイスをゲットできてました。

それにしても、研究では教科書が言っていることや自分の予想に反した結果が得られることがとてもよく起こります。勉強不足のために間違った予想を立てていたこと、調査や分析の方法が良くないことなどが原因であることもありますが、こういった「意外」な結果から、たまに、面白い研究が生まれたりします。

やっかいだけれども、「どうしてこうなるのか?」を調べていくことに、研究の面白さがあるかもですね!


さて、後半はポドゾルについてです。
ポドゾル、みなさん聞いたことある方が多いと思います。たしか、高校地理で習ったと思います。シベリアなどのとっても寒いところに分布する土の種類のことです。このポドゾル、実は日本にもあるんです!日本ではとっても珍しいポドゾルを見に、浜頓別まで行ってきました!




我らが大林長、佐藤先生です。
土壌の観察には、1mほど土を掘って、断面を作ります。
これがポドゾル!
ロシア語で「ゾラ」とは「灰」を意味していて、
上の方に見える白い層がまさにポドゾルを象徴する層(漂白層)なんです。
その下の層(集積層)は、アルミニウムや鉄が溶けてたまっているので赤くなっています。


色が全然違いますね!
灰色の漂白層(左)、赤い集積層(中)、もともとの土壌(右)です。

左のような様々な色が載っているハンドブックを使って、
色を記録していきます。
土壌観察は、色がとっても重要なんですね。

でも、そもそもポドゾルって何でしょう?ポドゾルは寒い地域で生成する土壌です。寒い地域では、樹木や草本の落ち葉などがなかなか分解されません。この様な場所では、分解の過程で有機酸という特殊な「酸」が発生します。この酸は、普通は溶けることのない土壌中の鉄やアルミニウムを溶かしてしまいます。そこにたくさんの雨が降ると、溶けた鉄やアルミニウムがどんどん下の方に流されて、沈殿していきます。酸によって鉄やアルミニウムが溶けてしまった層が漂白層で、沈殿している層が集積層です。

では、なぜ北海道でも浜頓別にポドゾルが発達したのでしょうか?それは、夏でもこの地域は冷涼だからです。例えば、私の住んでいる名寄では、冬は-20℃を下回りますが、夏には30℃を超える暑さになります。この様な場所では、夏に分解がどんどん進むので、ポドゾルは発達しません。浜頓別や猿払などのオホーツク海側では、夏でもオホーツク気団の影響を受けて、とっても涼しい場所なんです。(実際、この日は15℃くらいでした。寒かった、、)

この様に、ポドゾルはそこの気候に大きな影響を受けて発達します。そして、このポドゾルに対応した植生が発達し、さらにその植生が土壌に影響を与えます。

今回見学に行った場所では、もともとポドゾルが発達していたと考えられるのですが、砂利採取や牧草地などへの土地利用改変により、多くのポドゾル土壌が消失してしまいました。今回見学に行った場所は、研究のために土壌研究者で土地を買い取り、保全している地域とのことです。

最近では、ササがこの地域にも繁茂するようになりました。ササの落ち葉は分解されても有機酸の供給が少ないため、ササの浸入によりポドゾルがなくなってしまう危険があるとのことです。

土壌にも「絶滅の危機」があるのですね。


最後に、「北海道らしい景色」の場所に来ました。実は、ここは牧草地になったことにより、日本では貴重なポドゾルがなくなってしまった場所とのことです。


そんな、だだっぴろい牧草地とどこまでも続く道路で、青春的記念撮影です!


この1枚を撮るために、何度失敗したことか・・・(ため息)。

実習、お疲れ様でした!


2014年6月7日土曜日

初春の雨龍、にぎやかな苫小牧!

みなさん、こんにちは。名寄の片山です。名寄はすっかり夏になってしまい、今日(6/4)は35℃まで気温が上がりました!でも、朝方には10℃まで気温が下がります。季節の移り変わりが早く、1日の中の気温差もとっても大きくてびっくりしてしまいます。

さて、そんな中、少し前ですが、5/19に雨龍研究林の泥川アカエゾマツ林に行ってきました。このブログでも何度か紹介しています(こちら→南の果てから北の果てに!)。



夏の泥川アカエゾマツ林。ササが1m以上も高く、密に生えているので、
森の中に入るのは至難の業です。こういうところには、ダニもたくさんいます・・・。


冬の泥川アカエゾマツ林。
とってもきれいですね!

そして・・・。



初春(5月)のアカエゾマツ林です!!
右下に吉田先生がいますね。アカエゾマツがとても大きいことがわかります。
雪がしまって、ツボ足(スノーシューなど何も特別なものをはかないただの長靴の状態のこと)でも、簡単に歩けます。(たまに、ずぼっと雪にうもりますが。)でも、ササはまだ倒れているので、簡単に歩けるんです。こんな状況、1年の間に数週間あるかどうかです!道北では、ササという強敵がいるため、毎木調査(木の直径を測定する調査)は、この時期に行われます。



列状に木が生えていますね。これは、アカエゾマツの「倒木更新」です。
倒れて死んだアカエゾマツの上に、新しいアカエゾマツが生えて大きくなっています。
ササが多いこと、泥炭地で水位がとても高いことなどの理由により、
倒木の上の方が、アカエゾマツが芽生えるには良い環境であるようです。


雪どけ水でとても水位の高い泥川です!
9月に来たとき(森林保全実習)とは全く違う景色でした!!
アバンダンドチャネル(今は使われていない水路)が、とってもよく分かりました。

さて、これは泥川流域の夏の景観で・・・

これは同じ場所からとった冬の景観です。そして・・・
今回がこれ!ヤナギやカンバの芽が出つつある、まさに新緑です!
ちなみに、この時期の名寄はすっかり春到来しています。

道路にはクマさんの糞が・・・。


さて、そんな初春の雨龍から、春真っ盛りの苫小牧研究林に移動です!
苫小牧では、山菜真っ盛り(ちょっと終わりかけ)で、頂いた山菜を天ぷらにすべく、山菜パーティーを開きました!


苫小牧研究林出身の太田シェフによる天ぷら料理です♪
東京農大、北大生、筑波大の先生、苫小牧研究林ポスドクの人たちなど、
たくさんの人が集まって賑やかな週末でした!
色んな出会いがあることも、研究を行う楽しみのひとつだと思います。

タラの芽、コシアブラなどなど!
私は初めて食べたのですが、本当に美味しかったです!

ウドも頂きました!
苫小牧研究林に来ている学生さん(来月、このブログで紹介予定です!)の
出身地が名古屋ということで、赤みそベースの酢味噌で頂きました!
このほかにも、ギョウジャニンニクで作った餃子もあったのですが、
食べることに夢中で、写真を撮っていませんでした、、

ついで、じゃないや、山菜パーティーのメインの目的は、
数日後に誕生日を迎える苫小牧研究林修士1年生の学生さんを祝福することです!
サプライズケーキを準備しました!

さて、次の日は、神戸大から(ハリガネムシの)佐藤先生がいらっしゃいました。
目的は、ハリガネムシの調査を苫小牧でもやって欲しいとのこと。
調査を担う苫小牧研究林スタッフに向けて、ハリガネムシがどういう生き物なのか、
という講義のあとに、フィールドに出て、実際の調査について説明をして頂きました。

面白そうなので、私も含め、学生・ポスドクの人たちも見学に行ってみました。

数日前に仕かけたハリガネムシトラップに、ハリガネムシかかっているかな??

いました!!分かりますか?ハリガネみたいなものがハリガネムシです!

ハリガネムシ先生とハリガネムシ!
ハリガネムシ先生は、とっても気さくで話もすごく面白い「ハリガネ関西人」なのですが、
こう見えて(?)、日本生態学会の宮地賞という
とても素晴らしい賞を受賞された、新進気鋭の研究者なんです!

ハリガネムシってどういう生き物なのでしょう?
ハリガネムシはそもそも川で生まれるのですが、
カゲロウなどの水生昆虫に食べてもらい、寄生し、
水生昆虫が大きくなって陸に上がるのを待ちます。
陸にあがった水生昆虫は、カマドウマやカマキリ、ゴミムシに食べられてしまいます。
すると今度は、ハリガネムシはカマドウマなどに寄生し、
カマドウマなどの体の中でどんどん成長します。
そして、十分成長した後、ここがとっても怖いのですが
寄生しているカマドウマたちの行動を操って、
水中自殺させちゃって、カマドウマの体から晴れて脱出するんです!!
(つまり、カマドウマなどが自分で川に飛び込んで、自分は死んでしまい、
ハリガネムシはカマドウマから脱出します。)

この写真は、ハリガネムシに寄生された昆虫が水の中に落ちたため、
ハリガネムシがお尻から脱出しようとしているところです。


このハリガネムシ調査を行う研究林スタッフからは、「人間には寄生しないのか?!」と重要な質問がありました。考えただけでも恐ろしいですね。人間に寄生すると、体の中がハリガネムシでいっぱいになって、しまいには川に投身してしまう・・・、あわわわわ、、、

でも大丈夫です!人間がもしハリガネムシを食べたとしても、寄生はされません!イワナなどの魚にも寄生はできず、死んでしまうみたいです。でも、イワナに陸の宿主ごと食べられたハリガネムシは、ウネウネ行動をおこし、それによりイワナはハリガネムシを吐き出し、イワナから脱出に成功するものもいるみたいです。


ところで、イワナは川の中に住む魚ですが、イワナの食べるエサのうち6割程度がカマドウマなどのハリガネムシの宿主になっている川もあるそうです(エネルギー換算。詳しくはこちらの論文を読んでみてください!)つまり、イワナは森の昆虫たちに頼って生きているわけです。ですので、ハリガネムシが寄生した昆虫に投身自殺させることは、イワナにとっては生きるうえでとても重要なことかもしれません。そして、季節によってもハリガネムシの出現頻度は異なってくるみたいなので、イワナにとってのハリガネムシの重要性というのは、季節によっても異なるかもしれません。佐藤先生は、河川に棲む生き物にとって森がどんな風に重要であるのかを、主にハリガネムシを通して研究されているとのことでした。

森にすむ生き物と川にすむ生き物。ハリガネムシが両者をつなぐ重要な役割を担っているんですね。ハリガネムシ、その生き様から果たしている役割まで、とっても興味深いです!


その他、おじさんたちが色んな調査をしていましたが、
残念ながら今回はあまりうまくいかなかったようです(つまり、失敗・・・)。
研究というのは、失敗することは日常茶飯事です。
もちろん、失敗してしまうととっても哀しいですが、
このおじさんたちも、今回の失敗をもとに次の調査の計画を立てていました!
おじさんたちの背中、かっこいいですね!!

こんな風に毎日楽しい苫小牧研究林!
やさしく指導してくれる日浦先生もいます!
大学院生、募集中です!!



さて!もう既にご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、今年、新しいタイプの実習を開催します!大学・学部・年齢にかかわらず、誰でも参加できます!南紀熊野の森で、林業を中心に森について学びます。実際に体験して、色んな人の話を聞いて、そして、様々なバックグラウンドを持つ学生と交流するチャンスです!参加者は20名限定で先着順です。ぜひ、早めに応募ください!
森林フィールド講座ホームページ