2013年7月21日日曜日

北大 野生生物管理学実習@苫小牧研究林

こんにちは。特任助教の佐伯です。7月8日~12日に、北大農学部の3年生28名が野生生物管理学実習に来てくれました。
この実習のコンセプトはずばり、「つかまえる」です!

みんな、ちゃんとつかまえられたかな?

1.ネズミさん、やっぱりかわいいでチュー編
 
 
いくつかの班にわかれて、ネズミを捕獲するためのトラップをしかけました。
しかけた翌日、トラップを巡回してみると、おお! 何やらごそごそ入っているではないですか!!! (やったー!)
班に分かれてトラップを設置します。

前日しかけたトラップをあけると、ネズミが入っていました!!!


トラップは筒型で、ふたをあけて地面に設置しておきます。ネズミが入ると入口がしまる仕組みになっています。


データを比較してみると、トラップをしかけた場所によって、どうもつかまえたネズミの数や種類が違うようです。つかまえたネズミは、重さをはかり、雄・雌を判別して、マーキングをしました。

捕獲したネズミを注意深く観察。
 
細心の注意をはらってマーキングします。
野生のネズミにはじめてさわるという学生さんも多かったのではないでしょうか。

指導してくださったのは、札幌研究林の齊藤隆先生です。先生のネズミをあつかう手さばきは、まさに迫力満点。長年のご研究に裏打ちされたお話に、みな興味津々でした。




2.エゾサンショウウオはすごいよ編

苫小牧研究林には、エゾサンショウウオという北海道固有のサンショウウオが生息しています。専用に整備されたという池に移動して、エゾサンショウウオの観察を行いました。水の中をのぞくと、エゾサンショウウオの幼生がたくさん!!! これなら(どんくさい)私にも捕まえられるかも・・・。

水辺にならんでエゾサンショウウオを観察します。


とれたかな?

よく観察すると、ちょっとかわった形をしたエゾサンショウウオがいます。それはどうしてなんでしょう・・・。指導をしてくださった岸田治先生(天塩研究林)は、エゾサンショウウオの形の変化に着目して、大変興味深い研究をなさっています。実習後半には、グループワークの一つとして、エゾサンショウウオの形の変化と、ほかの生物との相互作用について考えるセッションも行われました。
捕まえたエゾサンショウウオを間近でみてみると・・・。

大きさやかたちが違います。

余談になりますが、苫小牧研究林では、エゾサンショウウオコーナーを設置しています。みなさん、研究林にお越しの際は、ぜひ見ていってくださいね。エゾサンショウウオと一緒に待ってまーす。


正面玄関に設置しています。


かわいいです。


3.おさかな絶対捕まえるぜ編
 

苫小牧研究林には、幌内川という、なんとも味わい深い川があります。この川のほとりに立つと、なんだかとっても水に入りたい気持ちになります。(←個人の感想です。 
実習では、実際に川の中に入って、河川や水生生物を調べる手法を学びました。


(1) ショッカーを使って捕まえよう
 
 

ショッカーの使い方をならいます。


実際に使ってみます。セッションを担当されている山浦先生(右の青い服の方)も真剣に見守っています。
先生の研究室の大学院生の方も応援にきてくださいました。


気がつくと、山浦先生もショッカー部隊に・・・。

 
(2)捕まえた魚の食性を調べてみよう
魚の胃の内容物を調べる手法を教えてもらいます。
 
スポイトで吸い出すと・・・

わあ!
 
 (3)とにかく捕まえよう
岸田先生、齊藤先生による熱血指導のもと、
とにかく人力で魚をとることを目指します。

心を一つにして魚をおいかける学生さんたち。
実際に魚がとれると「わーっ」という歓声があがり、みんなとっても楽しそうでした!

<参考ウェブサイト>

齊藤隆先生の研究室のHP
http://www.fsc.hokudai.ac.jp/wildlife/welcome_j.html

岸田治先生の研究室のHP
https://sites.google.com/site/bulgytadpoles/homu

山浦悠一先生の研究室のHP
http://www.agr.hokudai.ac.jp/formac/forman/index.html

苫小牧研究林HP
http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~exfor/Toef/hp_j/0_top.html

2013年7月16日火曜日

調査研究利用@札幌研究林

事務担当の山崎です。
本日は、当教育拠点事業の「教育共同利用(調査・研究)」制度を利用し、札幌研究林で実験を行っている学生さんの様子をご紹介いたします。


札幌研究林の試験地(実験苗畑)は、教職員や学生のいる研究棟から徒歩5分ほどのところにあります。

歴史を感じます。


橋を渡った先に実験苗畑があります。
ちなみにこの下は川ではなく、道路。
実験苗畑研究棟。実験室はこの中にあります。
 
 今回、当事業を利用してくださったのは東北大学大学院生命科学研究科の森井悠太さん。研究課題は「近縁な陸産貝類の種間における極端な形態差の形成と維持機構の解明」です。
主に、陸産貝類であるヒメマイマイとエゾマイマイ、それらの捕食者であるオサムシ類を飼育して摂餌実験を行っています。

 

ヒメマイマイ。北海道内にしか生息していないそうです。
 

オオルリオサムシ先生近影。
 
 

先程とは別のオサムシ、エゾマイマイカブリです。
首長で、アゴががっちりしています。
この細い首をカタツムリの殻へ突っ込み、中身を食べるそうです。
 

オサムシの世話をする森井さんとオサムシマンション。現在200匹ほどが居住しています。



エゾマイマイの実験はすでに終了したとのことで、亡骸。

 
 
札幌試験地(実験苗畑)には、今回ご紹介した研究棟以外にも、苗畑用地や温室などがあり、実験苗木生産試験、樹木フェノロジ-の観察、苗木を対象とした精密実験などを実施しています。


また当事業では、他大学学生に対し、卒業研究や修士・博士論文作成のためにフィールド・宿泊施設・実験施設を利用する活動を支援するために「教育共同利用(調査・研究)」制度を設けております。

興味がある方は、ぜひHP http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~kyoten/ をご一読の上、担当までお問い合わせください。
お問い合わせ先はf-kyotenあっとまーくfsc.hokudai.ac.jp です。

どうぞお気軽に!
 


2013年7月6日土曜日

森林科学総合実習Ⅰ @苫小牧研究林


みなさまこんにちは。特任助教の佐伯です。すこし前のことになりますが、苫小牧研究林に、農学部森林科学コースの2年生約40名が実習に来てくれました。今回は、実習4日目に行われた日浦勉(ひうらつとむ)教授による研究林紹介ツアーの一コマをレポートします。

1.野外実験から、生態系の営みを解き明かす
 苫小牧研究林では、日々、様々な野外研究が行われています。バスにのってまず向かったのは、「伐採・施肥実験区」とよばれるところです。ここでは、上層木の伐採を行う調査区、窒素施肥を行う調査区、その両方を行う調査区、何もしない調査区の4種類が設けられ、エンレイソウ類やユキザサといった林床植物が、光や土壌栄養分の変化にどのような応答を示すのかについて研究が行われました。現在、地球環境を脅かす要因として森林伐採や窒素過多などがとりあげられています。光や栄養の変化に対する生物の応答を知ることは、今後の森林の変化を予測する上で重要、というお話をうかがいました。
 

実験区の説明を行う日浦教授.あいにくの雨でしたが、学生さんは熱心に耳を傾けていました。
2.シカと生態系 ~バンビの長城~ 
 北海道ではシカが年々増加しており、森林への影響が心配されています。その影響は実際、どのようにはかることができるのでしょうか? 
 苫小牧研究林では、約20ヘクタールの森林を柵で囲い、シカを高密度で生息させる実験区と、シカをまったく入れない実験区の二つを設置しています。実験区の中の植生の違いは一目瞭然。シカの影響を把握し、今後の森林管理に活かす取組の一つを見ることができました。



シカ柵(通称:バンビの長城)の見学風景。中央より左側がシカのいない実験区、右側がシカを高密度で生息させる実験区。よく見ると、左側のほうが、植生がよく茂っているのがわかります。



エゾシカ。苫小牧研究林でも、個体数が年々増加しています。

 

3.樽前山の噴火と火山灰
 苫小牧研究林の森林は、約300年前に噴火した樽前山の火山灰の上に成り立っています。噴火時には、手のひらサイズの軽石がポンポン飛んできたとのこと。大きな穴の中に入って、火山灰や軽石に実際にふれてみると、当時の状況をより鮮明に想像することができます。約300年でできた土壌の厚さはわずか10cm程度です。成熟した生態系ができあがるには長い時間が必要なんですね。

 



穴を囲んで講義を受ける学生さんたち。軽石をおみやげに持って帰る人もいました。

 



母材である火山灰の上に、土壌が生成されています。
 
 
 

4.林冠クレーン
 次は、苫小牧研究林でもっとも大きな観測施設である林冠クレーンを見学しました。クレーンの周辺では、土壌や枝をあたためて樹木の応答を調べる温暖化実験などが行われています。日浦先生が、「クレーンに乗りたい人!」と聞くと、たくさんの学生さんが手をあげてくれました。いつか、実際にのって調査できる日が来るといいですね¥(o^0^o) ¥。

  
 
林冠クレーン(苫小牧研究林HPより)
 
 
5.川と森のつながり
 最後は、幌内川上流域に設置された河畔林実験区を見学しました。ドーム型の大きな骨組みの一面にシートをはり、川と森とのつながりを分断する実験をしたところ、水中の生物であっても陸上生物の多くを餌としていること、また陸上の生物であっても川の生物の多くを餌資源にしていることなどがわかりました。「生態系の保全や管理を考えるとき、森林だけ、川だけ、というのではなく、生態系同士、生物同士のつながりに配慮する視点を忘れないでほしい」という日浦林長からのメッセージで、本実習は締めくくられました。
 
幌内川におりたっての観察。川の水の味も堪能しました。
 

以上、ごくごくかいつまんで、実習の様子を紹介させていただきました。ご興味をもたれた方は、ぜひ以下のURLもご参照ください。
 
 
苫小牧研究林について


 
日浦教授の研究内容について


※苫小牧研究林では、学生さんの見学・訪問を随時受け付けています。
 


2013年7月2日火曜日

森林圏科学特論Ⅰ@天塩・中川研究林



こんにちは、特任助教の片山です。
先日、北大環境科学院修士1年生向けの実習(森林圏科学特論1:http://www.ees.hokudai.ac.jp/division/bio/modules/d3blog/details.php?bid=1395&easiestml_lang=ja)に参加してきたので、教育拠点プログラムとは関係ありませんが、参考までに少し、報告させて頂きます!





場所は中川・天塩の両研究林。





土壌から放出される二酸化炭素(土壌呼吸)を測定しているところです。
 測定するときは、普段は開いている状態の蓋が、勝手に閉まりました。
この様にして、自動で土壌呼吸速度を測定することができます。


(ちなみに、私は自分の研究で土壌呼吸を測定していますが、この様な自動観測ではなくて、
重い機械を持って行って測定しています・・・。自動観測、とても羨ましい!)



この試験地では、森林と大気の間でどのくらいの二酸化炭素が交換されているか、
つまり、森林が正味、どのくらいの二酸化炭素を吸収しているのか、
森林の炭 素循環に関する観測が行われていました。
観測は2001年から始まり、2003年にもともとあった針広混合林を伐採し、
カラマツを植林するという大規模実験です!


 ここは開拓期以来の山火事により、植生の回復がなかなか進んでいない場所です。
というのも、このあたりは特殊な基岩(蛇紋岩)で超塩基性のため、
植物が もともと育ちづらいうえ、強風かつ寒冷地という非常に厳しい環境が原因のようです。
それでも、植栽されたアカエゾマツはがんばって生きていました。

私もつ らいときは、このアカエゾマツを思い出して頑張ろうと思います・・・!!



山の頂上から、利尻富士が見えました!!
中央に薄く写っています。見えますか?!


最終日は、中川研究林にある琴平川沿いをハイキングし、
行きついた先には立派な滝が!!高さ18mとのことです。
琴平川はとてもきれいで、天気も良く、ハイキングに持ってこいでした。





ここでお弁当を食べました!ちょっと歩くと汗ばむ陽気でしたが、
滝のまわりは滝の水滴と風でとても涼しく、
蚊もよってこず、とても快適でした。
 私が座ったあたりには、シカと思われる毛がたくさん落ちていました。
ク、クマ??



 今回、たくさんの山菜に出会いました!
写真はウドです。
ウド以外にもワラビやアイヌネギなどを採り
おいしく頂きました!


盛りだくさんな実習だったので紹介したいことはまだまだたくさんあるのですが、それは次回の機会に残しておきます♪
今回紹介したのは主に天塩研究林でしたが、もう少し詳しいことが知りたい方は、是非、天塩研究林のページを見てみてください。

http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~exfor/Tsef/indexTs.htm