2026年1月29日木曜日

森林フィールド講座・八ヶ岳編 ~八ヶ岳の森と生物~

202584日から87日に筑波大学八ヶ岳演習林で行われた「森林フィールド講座・八ヶ岳編~八ヶ岳の森と生物~」の報告をします。

1日目:84()

 15時頃八ヶ岳演習林の事務所に集合。八ヶ岳演習林の事務所と学生宿舎はJRの最高標高駅である小海線野辺山駅(標高1345.67m)が最寄りです。季節は夏真っ盛りですが、標高が高いだけあり、涼しいです。野辺山駅の近くには、永遠の小学1年生(いや、高校生?)探偵が主人公の2025年のアニメ映画の舞台のモデルになっている国立天文台の宇宙電波観測所があり、昨年訪れたときと比べて賑やかになっていました。受付したのち、宿泊棟に移動し、宿泊の注意事項を確認し、フィールド講座のスタートです。

まずは、フィールドに出るにあたっての安全講習を行いました。フィールドワークは初めての1年生や様々な学部の学生が参加しているので、野外での危険と対策を確認します。例えば、熱中症や蜂、マムシといった動物のリスクです。

 その後、スタッフの挨拶も兼ねて、連携大学の紹介を行いました。北海道大学の研究林は面積が広大であること、道内各地と和歌山の各研究林の特徴と行っている調査や丸太を生産していることについて紹介しました。北大生も多数いましたが、研究林をよく知らない学生も多かったので知ってもらえてよかったと思います。山形大学の紹介では山名川演習林の概要と豪雪地帯であることや地域特性を生かした特色のある実習内容の紹介、また、次回の森林フィールド講座の開催についての告知がありました。次回のフィールド講座は冬の山名川演習林でどんな経験ができるのか、わくわくするお話が聞けました。信州大学は標高差のある演習林を有しており、山岳地帯にある演習林には、山小屋もあって、日本で最も高い場所にある演習林として特性を活かした実習が組まれているそうです。高知大学嶺北フィールドでは急峻な地形のなか、60年周期の法正林施業をやっており、面積が小さい中にぎゅっと魅力詰まっていました。琉球大学与那フィールドは世界自然遺産に登録されたやんばる地域に位置していて、大陸島であることによる固有種や希少種が多く生育しているそうです。筑波大学は今回フィールド講座を行った八ヶ岳・川上演習林のほか標高700-2400mにあり急峻な井川演習林(静岡県)がありそれぞれの植生の特徴が紹介されました。

 各大学、それぞれの魅力を感じられる紹介があり、ぜひとも、各演習林を訪れてみたくなります。 

↑来年度のフィールド講座は冬季に雪深い山形大学山名川演習林でやります!


 最後に、今回のフィールド講座の4日間で、考えてもらいたい内容が筑波大学清野先生から提示され、オリエンテーションは終了です。その内容は、

八ヶ岳の植物・動物のことを学ぶ3日間が始まります。


2日目:85()

 2日目午前中は川上演習林で人工林(人の手で苗を植えて育てた森)やこの地域特異の天然林の自然観察と野生動物の観察を行いました。予定では、川上演習林の見学は午後の予定でしたが、午後から雷雨の天気予報であったため、八ヶ岳演習林と比べて標高が高く落雷の可能性が高い川上演習林に午前のうちに行くことになりました。天気に応じて予定を臨機応変に変更するのも、野外フィールドでの実習ならではですね。

川上演習林では人の手で植えたカラマツ、サワラ、ストローブマツの紹介がありました。カラマツとサワラはもともとこの地域に分布する樹種ですが、ストローブマツは北アメリカに分布する樹種です。3樹種ともに幹が通直に成長しやすい針葉樹で、植林されることも多い樹種です。

 また、川上演習林で行われた研究の成果として、サワラがまとまって天然更新している森で遺伝子を調べたところ別の個体のように見える木々が同じ遺伝子を持っていて、「伏状更新」であることがわかったことが紹介されました。「伏状更新」とは、枝が雪の重みなどで地面にくっつき、根が出てきて一本の木のように成長していくことです。植物の力は不思議ですね。

↑サワラの天然林(伏状更新)の森(左)とサワラの稚樹(右)

 続いて、川上演習林に生息する野生動物を学びます!ここが一番盛り上がったかな~。技術職員の杉山さんによる、演習林に生息する天然記念物であるヤマネの巣箱の観察のレクチャーを聞きます。林内にはヤマネの生息調査のための巣箱が設置されており、研究者や学生によりさまざまな調査・研究がされているそうです。川上演習林は、人工林の割合が多く樹種の多様性が少ないことから、ヤマネの生息数は少ないと考えていたそうですが、調査により1haあたり1.9匹のヤマネが生息していることが分かっているそうです。ヤマネは、樹上性で枝伝いに移動するので、高いところにある巣箱をよく使用します。そのため、筑波大学では、巣箱を昇降できるように設置し、生息調査を行っています。高いところにある巣箱の降ろし方と巣箱の開け方を教わり、巣箱調査の始まりです。早速1つ目の巣箱にヤマネを確認!ヤマネが飛び出してしまった場合は、踏んでしまわないように人は動かないという注意を受けたのち、巣材をそっと取り出し、順番にヤマネを観察しました。今回の実習では、2匹のヤマネを巣箱で観察することができました。眠っているところを起こしてしまってごめんね。

↑巣箱の説明をする杉山さん(左)と巣箱の中の様子(右)

↑巣箱の様子をそっと覗く(左)と枝に乗るヤマネ(黒目が大きく可愛い)(右)

 午後は、八ヶ岳演習林で湿地林と広葉樹2次林の自然観察を行いました。八ヶ岳演習林は八ヶ岳の山麓の平坦な場所に位置しています。周囲は農地で囲まれていて演習林だけぽっかりと森が残っているような場所です。その中に歩道が整備されており、歩道を歩きながら、野辺山に生育する広葉樹や、希少な湿地性植物を教えてもらいました。

 野辺山の特徴的な樹種として、ヤエガワカンバを教えてもらいました。ヤエガワカンバは、中部山岳地域と北海道の足寄に隔離分布している樹種で、シラカンバやダケカンバに近い樹種ですが、樹皮が特徴的で、ごつごつとしており重なって剥がれます。ダケカンバの樹皮が分厚くなったイメージでしょうか。ほかにも、和製ヘーゼルナッツであるハシバミの木や果樹のリンゴを育てるための台木となるズミの木など、私たちの生活にも関連する樹種を教えてもらい、学生たちは興味深そうに聞いていました。

↑和製ヘーゼルナッツ、ハシバミの葉と実

 八ヶ岳演習林の湿地林には、サクラソウやヒメザゼンソウ、モウセンゴケなどの希少な植物が生育するそうです。夏には、地上部が枯れてしまうものも多いのですが、かわるがわるモウセンゴケを見せてもらいました。モウセンゴケは湿地性の食虫植物です。

↑広葉樹二次林を散策(左)と順番にモウセンゴケを観察(右)

 筑波大学八ヶ岳演習林が取り組んでいる希少種保護について、技術職員の井波さんから教わります。一つ目は昨年、構内に人工的にビオトープを作り、「生息域外保全」に取り組んでいるタルマイスギですタルマイスギは長野県内では野辺山のみ生育している絶滅危惧種ですが、その生息地が開発されることにとなり、最後の手段として生息地ではない、八ヶ岳演習林の構内で保全に取り組むことになりました。また、長野県と山梨県に県境付近(本当に、日本国内、この地域だけ!)にのみに生育している大変稀なヒメバラモミを構内に植林し、育てています。自然環境下では、芽生えてもシカに食べられることもあり、大きく育たないことも多いのです。そのため、ここでは鹿柵を設置して、シカの害から守っています。ヒメバラモミの葉はとても尖っていて触ってみるとちくちくしました。植物の特徴を触って確かめることができるのも、実習の魅力です。

↑タルマイスギ域外保全のために作ったビオトープ(左)とヒメバラモミの植林地(右)

3日目:86()

 今回の講座の課題の一つである、八ヶ岳の植物についてですが、1日目に筑波大の清野先生に標高の違いによる、植生の違いを教えてもらいました。2日目には、八ヶ岳山麓の標高1000mほどに位置する八ヶ岳演習林を見学しました。そして3日目は、バスで麦草峠へ行き、八ヶ岳の標高2,000mを超える亜高山針葉樹林の観察です。野辺山も涼しかったですが、さらに標高が上がり、肌寒いくらいでした。八ヶ岳の亜高山帯では、常緑の針葉樹であるシラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガが分布します。亜高山帯では森の木々はゆっくりと成長するので、サイズは小さくとも思ったより年齢が高い木が多いことを教わりました。麦草峠の特徴としては、太平洋と日本海のちょうど中間に位置するため、その両方の特徴を持つ森が成立しているとのこと。例えば、雪に対して強く日本海側に多く分布するオオシラビソと、乾燥に強く太平洋側に多いシラビソが混生しています。八ヶ岳演習林と比べて、同じ地域でも標高によって、植生が変わっていくことを実際に見ることができました。さらに、植生は、標高だけで決まるわけではないので、麦草峠周辺で、地形や風、地質の条件により、通常であれば、さらに標高の高いところに成立する高山帯植生を見ることができます。そこでは、高く育つ木が少なく、ハイマツやコケモモといった地を這うように育つ木を見ることができました。

↑散策MAP/白駒の森と奥庭そして白駒の池をぐるっと一周しました

↑麦草峠の植生の説明を聞く(背が高い針葉樹が多い)(左)
高山帯(樹高は人と同じくらい)を歩く(右)

 その後、白駒池をぐるりと一周散策しました。1時間くらいでしょうか。学生それぞれ植物やキノコなど、思い思いに興味を持って歩いていたことが印象的でした。

↑白駒池(左)とそのまわりに広がる苔の森(右)

 3日目の夕飯は最終夜ということで、BBQです。筑波大演習林の造材現場(木を伐って丸太を売る現場)で出た、カラマツを使ったスウェーデントーチや端材を利用した焚火も配置されていい雰囲気でした。メニューにはシカやイノシシといたジビエのジンギスカンを食べ、野生動物の問題についても考えながら、美味しくいただきました。

 夕食後も、各々、火を囲んで語り合ったりと、話はつきないようでした。学部1年生から大学院生まで、また、学部や研究分野が異なメンバーが集まっているからこと、それぞれ、刺激を受けあっている様子で、とてもいい時間だったように思います。

↑苦労して火を起こしたBBQ台を囲んで乾杯(左)
すっかり日が暮れて焚火を囲みながら語らう(右)


4日目:87()

 最終日は初日に提示された課題について、45名のグループごとに発表を行いました。まとめる時間も短いなか、3日間で感じたこと、考えたことをそれぞれの興味とともに発表してくれました。フィールド講座は、いろいろな大学のさまざまな分野を学んでいたり、興味を持っていたりする学生が集まっていることもあり、個性が出ている発表が多く、面白かったです。

↑3日間の成果の発表

 大学生の今だからこそ、参加できるフィールド講座です。フィールド体験に来るもよし、いろんな学年、いろんな分野の学生にあって刺激をもらうもよし、少しでも興味があれば、ぜひ参加してもらいたいと思います。

おまけ
 帰りにみんなで、お隣にある宇宙電波観測所を見に行きました。世界最大級の電波望遠鏡です。迫力ありますね~。展示も充実していて、勉強になりました。実習と合わせて、現地の観光ができるのも楽しいです。


 苫小牧研究林 原    


2025年9月25日木曜日

琉球大学・公開森林実習「亜熱帯林体験実習」

 苫小牧研究林技術職員の荒木です。

2025825-28日にかけて、琉球大学農学部附属亜熱帯フィールド科学教育研究センター与那フィールドにて公開森林実習「亜熱帯林体験実習」が開催されました。この実習では沖縄本島北部のやんばる地域を舞台に森林にまつわる様々なフィールドを巡ります。この記事ではその様子を紹介させていただきます。

今年は宇都宮大学・筑波大学・静岡大学・京都府立大学・宮崎大学から計14名の学生が参加していました。

 

まずは沖縄へたどり着かなくては話が始まりません。台風シーズンのため少し心配していましたが、無事に那覇空港へ到着。ちょうど甲子園の優勝校が帰着したタイミングだったようで、ものすごい歓声と拍手の嵐に巻き込まれました。

移動日含め、今回の実習は天候に恵まれました。


825             実習初日

那覇からバスを乗り継いで、道の駅おおぎみ「やんばるの森ビジターセンター」に集合後、そのまま慶佐次湾マングローブ林の見学に向かいます。今回訪れた慶佐次川河口域は「慶佐次湾のヒルギ林」として国立公園に指定されています。

 マングローブといえばシオマネキ 

よく耳にする”マングローブ”という単語は海水が含まれた塩分濃度の高い湿地に生育する樹木の総称です。ヒルギ科はマングローブを代表する植物で、慶佐次湾にはメヒルギ・オヒルギ・ヤエヤマヒルギの3種類が生育しています。

谷口教授による解説を受けながらマングローブ林に設置された木道を進みます。学生達は興味深そうにマングローブ林を観察していました。

 マングローブといえば胎生種子 

マングローブ林にはシオマネキやハゼの仲間、アナジャコなどの生物もたくさん生活しています。現地ではシオマネキのオスが大きな片手を振り回している様子も観察できました。ユーモラスな求愛行動ですね。


慶佐次湾を後にして、これから4日間お世話になる与那フィールド管理棟へ。

ガイダンスでは高嶋准教授より今回の実習の主旨について説明がありました。やんばる地域は国頭村・大宜味村・東村で構成される山林の多く残る地域で、その一部は2021年に世界遺産に指定されました。世界遺産と聞くと人の手の入っていない森林を想像しますが、やんばる地域では古くから人が森林と関わりあって生活してます。住民の生活圏世界遺産の森の密接さがやんばる地域の特徴です。

他にも与那フィールドを利用するにあたっての注意事項や食事の当番に関する説明を受けました。

 

夕食でおなかを満たした後はナイトウォークです!

集合時間に玄関を出た途端、早速リュウキュウコノハズクの大きな鳴き声で出迎えられました。あまりにもはっきり声が聞こえるので一瞬BGMを流しているのかと思うほど。ちゃんと野生のリュウキュウコノハズクの声でした。

ナイトウォークに出発!

管理棟周辺をガイドさんと共に生物を観察しながら歩きます。

案内していただいたのはYambaru Greenの皆さん。やんばる地域で自然体験ツアーや生物調査といった活動をされています。

 

ガラスヒバァ 沖縄の方言名がそのまま和名になっています


2時間弱のナイトウォークを終え、管理棟前へ帰ってくると再びリュウキュウコノハズクがお出迎え。どうやら管理棟前のセンダンの木に留まって鳴いているようで、全員興味津々で樹上を見上げていました。

8月26日 実習二日目

二日目は与那フィールドの天然生林に設置されているタワーサイトの見学から始まります。

いよいよやんばるの森の中へ足を踏み入れます!

 

森林の中を進んでいく参加者たち


森林生態・気象観測タワー 高頻度で台風や強風に見舞われる沖縄でタワーを維持しているのはすごいですね 


タワーサイト周辺は戦後に伐採の記録を持つ森林で、古い樹木でも樹齢は70年ほどです。

観測タワーによる気象観測のほか、毎木調査区やリタートラップが設置されており、林相がモニタリングされています。

 

林床を歩いていたシリケンイモリ 

午後からはヤンバルクイナ生態展示施設を訪問しました。

ヤンバルクイナは1981年に記載されたやんばる地域にのみ生息する飛べない鳥です。かなり最近発見されていたことに驚きました。ヤンバルクイナは人間活動による生息地分断やロードキル、マングースやノネコによる捕食により個体数が減少していました。

マングースは20249月に奄美大島で根絶宣言が出されましたが、沖縄本島にはまだ生息しています。大宜味村塩屋から福地ダムの福上湖を経て大泊橋に至るライン(SFライン)より北部での完全排除を目的として、柵の設置や捕獲といった取り組みが続いています。

サービス精神旺盛なヤンバルクイナのクー太くん

これらの取り組みの成果から、ヤンバルクイナの個体数は増加傾向にあるようです。

実習中にもたびたびヤンバルクイナの鳴き声を聴いたり、足跡を見る機会がありました。

 

次は与那フィールド内の世界遺産に登録されているエリアに足を踏み入れます。

午前中に訪れたタワーサイトは第二次世界大戦後に皆伐されている二次林でしたが、ここは皆伐の記録が無いより林齢の高い森林です。午前中に見学したタワーサイトの天然生林も立派でしたが、このエリアにはより大きな樹木が存在します。70年ほどでは完全には再生していないようです。


イタジイ(スダジイ)の大径木と技術職員の上原さん

余談ですが、上原さんが右手に持っている木の棒はハブを探知するためのものです。森林内を歩く際は琉球大の技術職員や学生TAの方々がこの棒で前方を探り、ハブをあらかじめ察知してくれています。

 

オキナワウラジロガシ(上)とイタジイ(下)の堅果 

夕食・朝食は参加学生が班ごとに持ち回りで調理しています。今日の夕食はタコライスでした。


おいしくできたタコライス

夕食後、高嶋准教授、谷口教授による研究紹介が行われました。荒木からも北海道大学の研究林について簡単に紹介させていただきました。来年は北大の公開森林実習に来てくれると嬉しく思います。

 

827             実習三日目

高嶋准教授の案内で与那フィールド管理棟周辺の林道観察を行います。一日目の夜にナイトウォークで歩いた場所ですが、明るいときに観察するとまたいろいろなものが見えてきます。

 

沖縄といえばシークワーサーのイメージですが、国頭村ではタンカンを多く栽培しているとのこと。他にも、生垣として利用されているイスノキや、琉球王国時代より建材として重要視されてきたイヌマキなど多様な樹種が様々な方法で利用されています。他にもガジュマル・アカギ・ヒカゲヘゴなどなど、やんばる地域で身近な植物を利用や文化を交えて紹介していただきました。なにせ種数も量も普段見ている北海道の森林とは比べ物にならないほど多く、森を見ているだけで圧巻です。

高嶋准教授に解説していただきます

準絶滅危惧種のアオミオカタニシ。
生垣のイスノキにたくさん付いていました。
 

午後は里山研究林での広葉樹造林地と針広混交林化の進むリュウキュウマツ人工林を見学しました。広葉樹造林地ではオキナワシャリンバイやモッコク、ナギといった樹種が栽培されています。


里山研究林の広葉樹造林地

沖縄でのリュウキュウマツ造林はマツ枯れの発生により衰退し、現在ではその多くが針広混交林になっているとのことでした。ここでは伐採方法を試行し、森林保全と林業のバランスという課題に取り組んでいます。

 

三日目の最後に沖縄本島最北端の辺戸岬に立ち寄りました。

この日は空も晴れ渡り、海の向こうに鹿児島県の与論島の島影も見ることができました。

辺戸岬からの光景。サンゴ礁が見えます。

8月28日 実習最終日

最後はまとめのレポート作成の時間です。実習を通して得たものや感じたことがきっと沢山あったのではないでしょうか。

レポート作成中 

今回の実習は比較的天気にも恵まれ、充実したプログラムを体験することができました。参加者にとっても亜熱帯林を観察し、森林と人間の関係を再考する貴重な機会になったと思います。

終わりに、今回ご担当いただきました琉球大学の教職員のみなさま、学生TAのみなさまのサポートに感謝を申し上げます。

2025年2月13日木曜日

森林研究・フィールドトレーニング「ササの一斉開花・枯死が生態系・森林管理に与える影響」

 

2024828-30日に中川研究林で行われた森林研究・フィールドトレーニング「ササの一斉開花・枯死が生態系・森林管理に与える影響」について報告します。北大と信州大から2名の学生が参加してくれました。

 

道北では、2022-2024年にかけてササ(クマイザサもしくはその近縁種)が大規模に開花・結実し、その後枯死しました。このような大規模なササの一斉開花・枯死は生態系の様々なプロセスに影響すると考えられています。このプログラムでは、このササの一斉開花・枯死が生態系に与える影響について、ササが開花・枯死した現地を観察しながら、どのようなアプローチで探求できるかを考えました。

 

1日目は、中川研究林内の各所をめぐり、森林全体の様子、開花していないササの様子を見学したのち、2023年にササが一斉開花・枯死した場所、2024年に一斉開花した場所を見学しました。また、実験的にササを刈り払うことで、ササがいなくなることでおける生態系への影響を検証している試験地を見学しました。さらに、1960年代にチシマザサが一斉開花・枯死した後にその後の植生の変化がモニタリングされている場所(写真)も見に行き、ササが開花・枯死するこの植生への長期的影響についても議論しました。最後に、参加者で議論し、2日目にどのような調査をするかを考えました。その結果、2016年以降にササを刈り払い続けてササが消失している試験地で樹木の実生を調査することになりました。

2023年にクマイザサが開花・枯死した場所の見学

1960年代にチシマザサが一斉開花枯死した場所。今はもう背丈を超えるチシマザサが群生している



2日目は、前日に決めたササ刈り払い試験地で樹木の実生調査を実施しました。2m×2mの調査区を2016年からササを刈り続けてササが消失した場所と、ササを刈らずに残っている場所に3か所ずつ設置し、調査区内の樹木の実生の数を樹種別に数えました。ササがある場所には樹木の実生はほとんどありませんでしたが、ササ刈り区ではトドマツ、ハリギリ、イタヤカエデ、ダケカンバなどの実生がたくさん生えていました(写真)。中には、樹種がわからない実生もあったので、室内に戻ってから図鑑などで調べました。

実生調査の様子。林床には無数の樹木の実生が生えていて、数えるのが大変でした



3日目は、参加者2名で協力して、2日目の調査結果を入力・集計し、発表をしてもらいました。樹木の実生更新にとってササの存在の影響が非常に大きいこと、ササがない場所でも樹木の実生の数や種組成は異なっており、光環境などの環境の違いが影響したのではないか、といったことを考えてもらいました。

3日間、お疲れさまでした!

発表の様子。短い時間でよくまとめてもらいました


担当:鈴木・福澤(中川研究林)


2024年10月7日月曜日

筑波大学森林生物学実習に参加しました

 

雨龍研究林 技術職員の原です。202493日から6日の日程で、筑波大学山岳科学センター八ヶ岳演習林で開催された森林生物学実習に参加してきました。

筑波大学八ヶ岳演習林は、高原野菜で有名な長野県の野辺山に所在します。最寄り駅は小海線の野辺山駅です。野辺山駅はJRで、最も標高の高い駅です。9月の初旬の本州は、暑いのではと覚悟していましたが、野辺山は標高が高いため気温は北海道とあまり変わらず、夜は肌寒いくらいでした。

初日は、ヘルメットが配られ、安全講習がありました。落雷への注意やハチ、ヘビ、マダニと行った動物に関する注意を確認しました。

実習中の夕ごはんと朝ごはんは自炊でした。初日の夕ご飯は「自炊と言えば、カレー!」。しかし、米が手に入らず、ご飯のかわりにパスタを主食とし、コメ不足を実感しました。しかし、サラダは野辺山産の高原レタスやいただいたインゲンマメを使うなど、美味しくいただきました。



 みんなで自炊視野カレーと野辺山の高原レタスの夕食

 2030分から夜の講義。翌日の予習です。今回の実習の目的は、森林の樹木の見分け方や同定方法を学ぶことと、実際に演習林で採取した植物の標本を作製することです。清野達之先生から標本の作製方法の講義と、八ヶ岳周辺の植生について、カンバを例に学名の見方や、同属樹種で標高や土壌といった条件によって分布が変わることを学びました。そして翌日以降の実習では、実際に山を歩きながら分布を観察します。

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2日目(94日)は、まず、川上演習林に樹種同定と植物採取に向かいます。川上演習林は13601790mと標高差がある演習林です。標高約1540mまで車で登り、実習スタート。まずはそこから林道沿いにさらに歩いて登っていきます。主要樹種ミズナラやブナ、カエデ類。私の所属する雨龍研究林のある北海道の北部に比べ樹種数が多く、特にカエデ類は多くてなかなか覚えるのが大変。林道沿いを歩いていくと川があり、そこに近づくにつれて、土壌が湿潤な場所や川が引き起こす攪乱を好む樹種へと植生が変わっていくのが分かります。そのコントラストを実感しながら歩きました。


林道沿いを歩きながら、樹種同定と標本採取


尾根伝いに山を下ります。すると、今度は標高の違いで樹種構成が変わっていきます。前日に学んだカンバを例にすると、標高の高いところではダケカンバが主だったのが、降っていくにつれて、シラカンバやヤエガワカンバの生える森になります。ヤエガワカンバは、このあたりの本州中部山地と北海道の足寄周辺に隔離分布する珍しい樹種です。葉は、シラカンバにそっくりですが、樹皮がごつごつしており、シラカンバの平滑な樹皮と比べると一目瞭然です。

今回の実習のメインは樹木同定ですが、森林生物学実習ということで生物のついても学びます。北海道でも大きな問題になっている、シカの食害。特に、針葉樹では、ウラジロモミ、広葉樹では、リョウブやミズキが好まれて食べられているそうです。見事に樹皮を食べられてしまったミズキがありました。このように幹の周り一周、「環状剥離」されてしまうと、枯死に至る可能性が高いのです。シカの食害は全国各地で問題となっています。



樹皮をシカに食べられたミズキ


そしてなんといっても、2日目午前のクライマックスはヤマネ!八ヶ岳演習林では天然記念物であるヤマネの生態調査もしており、ヤマネの巣(寝床)を見せてもらうことができました。

ヤマネの巣箱をおそるおそる覗くと



ヤマネの巣箱

いました!ヤマネです。小さいからだに大きな目でした。学生たちも私もテンションが上がってしまい、寝ていたヤマネを起こしてしました。ヤマネは夜行性で、巣は同じところではなく、毎日のように変えるそうで、このような巣箱を用意しておくと、自分でコケや木の皮といった巣材を持ち込んで使ってくれるそうです。

2日目の午後は、八ヶ岳演習林で樹種同定と標本採取を行いました。八ヶ岳演習林は、川上演習林と比べると標高が低く湿地が分布するエリアのため、川上演習林とはまた、異なる樹種構成の森林です。湿地林のなかには、定期的に毎木調査を行っているエリアがあり、木の成長や入れ替わりなどモニタリングされています。

湿地以外の中部地域の比較的標高の低い森は、シラカンバやミズナラの広葉樹の二次林で、北海道の植生に似ていましたが、ヤエガワカンバやヤマハンノキ(雨龍研究林でよくみられるのはケヤマハンノキ)、クリといった樹種が森を構成していました。


八ヶ岳演習林の湿地林


八ヶ岳の演習林の広葉樹の二次林

2日目の締めは、演習林の近くにあるヤツガタケトウヒを見に。ヤツガタケトウヒの個体数は5000本程度と言われ、絶滅危惧種です。樹皮など、アカエゾマツに似ています。個体数が少ない上に、単木的な生育なので交配が難しく、種の保全が課題であると感じました。



絶滅危惧種のヤツガタケトウヒ

ヤツガタケトウヒを見学して、宿舎に戻りますが、2日目の実習はこれで終わりでありません。宿舎に戻ったら、今日1日集めた樹木の枝葉のさく葉標本づくりを行いました。あの牧野富太郎氏をモデルにした朝ドラでもおなじみの新聞紙に挟まれた押し葉のようなものです。


柵用標本の作製途中、7種のカエデ

 柵用標本の提出がこの実習の課題でもあるので、学生たちは真剣に取り組んでいました。山からとってきた枝葉は水分を含んでいるので、標本を挟んだ新聞紙の間にも吸い取り紙として新聞紙を挟み、押しつつ、枝葉の水分を取ります。きれいな柵用標本をつくるこつは、こまめに吸い取り紙を変えること。きちんと作ると半永久的に保存することができるそうです。清野先生が学生時代に作成した標本を見せていただきましたが、きれいに保管されていました。


柵用標本の作製途中、標本は板に挟んできつく縛り、漬物石で抑える

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3日目(95日)は、八ヶ岳連峰に標高2,127mを通る麦草峠へ。このあたりの森は、コメツガ、シラビソ、オオシラビソ、チョウセンゴヨウ、ハイマツ、といった、針葉樹をメインに、ダケカンバ、ネコシデ、ナナカマドが混交する森です。ここでは、特に針葉樹をメインに、標高や土壌等の条件の違いによる植生の違いを観察しました。


数種の針葉樹が混交する森


岩が多い場所はコメツガが純林をつくる

 午後からは、白駒池の周辺の森を見に行きました。少し森を見て、引き返す予定でしたが、学生さんの一声で、白駒池をグルっと1周しました。11時間くらいでしょうか。苔と原生林が広がる神秘的な森を観察しながら、歩きました。登山が趣味の私としては、実習でこのようなフィールドに来られるのは羨ましいなと思いました。


白駒池周辺の森林について学ぶ

白駒池


苔の森。北海道と同じで倒木更新が見られます。
 

最後の夕食は、ジンギスカン+ジビエ。長野県は北海道に次ぐ、ジンギスカン大国とのこと。羊(ラム)だけではなく、豚、ジカ、イノシシのジンギスカンをいただきました。


長野のジンギスカン。ジビエもあります。

夕食後も、実習は終わりません。学生さんたちは2日目に作成した、柵用標本の吸い取り紙の交換や明日、最終日に行われる樹木同定の試験のための復習をします。私もさく用標本作りを体験しましたが、北海道まで持って帰れないので、学生さんたちの復習用に使ってもらいました。


熱心に復習中
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4日目(最終日、96日)は、樹種同定の試験を行って実習終了です。試験は、2日目に採取してきた枝葉と、3日目に白駒池周辺で見てきた樹木の写真の樹種同定です。皆、優秀な成績でした。


試験の様子。葉の形や付き方、繁殖器官で同定します。

 最後に4日間お世話になった宿舎の掃除を行って、解散です。

 なかなか行くことができない、筑波大学の八ヶ岳、川上演習林の森や八ヶ岳白駒池周辺の亜高山帯の森を歩くことができ、いい経験をさせていただきました。今回の実習は自炊だったので先生や学生たちと一緒に調理し、食事をするなど、筑波大学の学生と交流することができ、楽しい時間を過ごすことができました。清野先生をはじめとする八ヶ岳演習林のスタッフの皆様、筑波大学生の皆様に感謝です。ありがとうございました。


高原野菜と八ヶ岳。八ヶ岳演習林宿舎からすぐの畑から