2024年10月7日月曜日

森林フィールド講座・信州編 〜⾃然の成り⽴ちと⼭の⽣業〜

 中川研究林 技術職員 高橋悠河

2024820日から823日に信州⼤学農学部野辺⼭ステーションで行われた
森林フィールド講座・信州編~自然の成り立ちと山の生業実習~に
技術スタッフとして参加しました。その実習の様子をブログで紹介します。

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1⽇⽬:820()

昼過ぎごろに野辺⼭ステーションへ集合。

まず信州⼤学 ⼩林元 准教授より実習のガイダンスを受けたあと、
信州大学 荒瀬輝夫 准教授、筑波大学 清野達之 准教授、私高橋(北海道大学)が
それぞれの演習林(研究林)について紹介をしました。

休憩を挟んだあと、信州大学の小林 准教授より中部⼭岳の⾥⼭に関する講義があり、
信州周辺における⾥⼭の利⽤の歴史などについて学びました。



写真1, 講義の様子

1日目の最後は、次の⽇の野外調査の説明と使⽤する道具の準備を⾏いました。



写真2, 次の日の道具の準備

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2⽇⽬:821()

2⽇⽬の午前中は、バスで筑波⼤学 川上演習林に20分ほど移動し、
毎⽊調査をおこないました。

調査地は過去に薪炭林として利⽤されていた場所で、
ミズナラが優占する広葉樹林となっていました。
学⽣たちは51班になり、20*20 の正⽅形のプロットの場所の選定から行いました。


調査では樹種同定を⾏う際に、正確に同定を⾏おうと、
突き詰めて話し合っていたのが印象的でした。


写真3,毎木調査の様子

調査が終わると林内を尾根沿いに散策しながら下⼭し、途中の広場で昼⾷をとりました。

午後は筑波⼤学川上演習林 杉⼭昌典 技術専⾨職員より、
昇降式の巣箱によるヤマネの⽣息調査の解説をしていただきました。
実際にヤマネが休眠している姿も⾒ることができ、⽣徒たちも興味津々のようでした。



写真4,休眠中のヤマネ

散策を終え、野辺⼭ステーションに戻った後は、
調査したデータの解析を班ごとに⾏いました。

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3⽇⽬:822()

3⽇⽬は天気の崩れが予想されたため、
当初予定していたプログラムの⼀部を⼊れ替えて⾏われました。

林業実習体験ということで、野辺⼭ステーション内の歩道沿いに⽣えてきた
細い針葉樹や広葉樹の枝などを、⼿ノコや鉈を使⽤して整理しました。

その後は⼊れ替わった⼈⼯林の保育に関する講義で、
林業のサイクルや意義についての解説が⾏われました。

また、夜に予定されていた研究林紹介もこの時に⾏われ、
山形大学 菊池俊一 准教授、琉球大学 金城孝則 技術職員、高知大学 長井宏賢 技術専門職員より解説がありました。


崩れるかと思われた天気は意外にも晴れが続き、
昼⾷のお弁当は野辺⼭ステーションの⽞関前で⾷べることができました。

昼⾷後はチェンソーを使⽤した伐⽊、薪割の体験を⾏いました。

まず、職員がデモンストレーションで実際に針葉樹を1本伐倒した後、
伐倒した⽊についている枝をチェンソーで切り、⻑さ1 m 程度の丸太にしたものを
薪割しやすいような⼤きさにチェンソーで切る作業を⾏い、
切ったものを斧で薪にしました。

参加学生たちは実際に薪割斧やチェンソーをもった重みや、排気⾳に驚きながらも
果敢にチャレンジをしていました。

道具の整備も含めて実習ということでチェーンソーの清掃、整備も⾏いました。



写真5, チェーンソー実習の様子


その後、前日の調査のデータをもとに「調査プロットにはどんな樹種がどのくらいの本数あったか」、「今後どのような森になっていく可能性が考えられるか」という内容で発表が行われました。
各班の考察はそれぞれ異なった方向性で展開されて、非常に興味深い発表でした。




写真6, データ解析の結果発表


夜には午後に割った薪も使用して親睦会が開かれました。

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4日目:823()


最終日は瑞牆山(みずがきやま)山中、標高
1800m程度までの天然林観察を行いました。

この周辺は武田信玄によって金山として利用されていたという歴史があり、その後今日に至るまで厳正に管理されてきた森が残っている場所ということでした。

地面は苔に覆われ、大きな奇岩が連なり、その岩の上に針葉樹、広葉樹入り混じりながら成長している様子は圧巻の一言でした。



写真7,巨岩としがみつくような根


一方で、山のふもとには薪炭林の里山として利用されてきた場所もあり、炭焼窯の跡も残っていました。
圧倒的な自然と人の利用の歴史がここまで近くに存在する場所があるのはとても不思議な感覚であり、興味深かったです。

学生たちも様々な質問をしながら、積極的に学んでいる姿が印象的でした。


写真8,コケの分類中

昼食後は野辺山ステーションに戻り、実習のレポートとアンケートを提出して解散となり、本実習は終了となりました。

最後に、ご対応いただきました信州大学のみなさま、筑波大学のみなさま本当にありがとうございました。4日間を通して非常に興味深く、刺激的な実習でした。
参加学生にとっても、調査に始まり、汗を流し、歴史と人と森との身近さを肌で感じるという、ここでしかできない非常に濃密な4日間となったのではないかと思います。

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