特任助教の長田です。今回は、9月2日から5日まで行われた信州大学農学部の公開森林実習「アルプス登山学演習」を紹介したいと思います。中央アルプスに演習林をもつという信州大学の強みを活かして、登山および渓流遡行についての技術を学ぶという全国でも珍しい学生実習です。なお、実習を行う西駒演習林は標高1,410〜2,672 mまで広がっており、全国で一番標高の高い場所にある大学演習林だそうです。
実習には信州大学のほかに筑波大学、鳥取大学、宮崎大学、明治大学、日本獣医生命科学大学、京都府立大学、福井県立大学といった様々な大学から学生が集まりました。募集要項に体力についての記載があったことからか、元気な方ばかりでした。
9月2日(初日)
長野県伊那市の信州大学農学部・食と緑の科学資料館「ゆりの木」に集合し、ガイダンスを受けました。まず最初に信州大学農学部准教授の荒瀬輝夫先生に西駒ステーションの説明をしていただきました。つづいて本実習の責任者である同准教授の小林元先生およびTAの信州大学山岳会の皆さんにより、地形図の見方の説明を受けました。
荒瀬先生から演習林の説明を受けます |
山岳会の方から地形図の読み方について説明を受けます |
その後バスで信州大学農学部・西駒ステーションの山麓にある桂小場学生宿舎に移動し、装備点検、ザイルワークの説明などを受けました。とくに安全には細心の注意を払っており、持って来た装備を全てザックから出してひとつひとつ丁寧に確認しました。登山に慣れていない学生さんが多く、また、登山は自然が相手であり何が起こるかわからないため、事前準備をきちんとすることが非常に重要だということがよくわかりました。
9月3日(2日目)
馬目さんがルートを作って |
学生さんはひたすら |
ひたすら ひたすら |
登っていきます |
夜には馬目さんによる海外登山のスライドショーが行われました。馬目さんは2012年にネパール・ヒマラヤのキャシャール峰初登攀に成功し、ピオレドール賞という国際的に有名な賞を受賞された方です(登山界のアカデミー賞とも呼ばれるほどすごい賞だそうです。くわしくはかっこいい動画を参照してください。なお、この動画の上映会も行われました)。馬目さんは非常に気さくな方で、海外の楽しい話をたくさんしてくださいました。
9月4日(3日目)
中央アルプスの西駒登山の日です。桂小場学生宿舎の掃除を行ってから、8時過ぎに出発し、西駒山荘を目指しました。途中から雨が強くなってきて、みんなずぶ濡れになりながらひたすら歩きました。森林限界を超えて山荘が近づいてきても天気が悪く、景色が良くないのは残念でした。
天気が悪い中ひたすら登っていきます |
雨はやまず景色は良くなりません |
14時過ぎに西駒山荘に到着しました。西駒山荘は中央アルプスの将棊頭山のすぐそばにあります。1913年に小学生の登山で遭難事故が起こったことが原因となり、避難小屋として作られたという歴史があります。なお、この話は、新田次郎の小説「聖職の碑」で有名です。信州大学の中原寮と縁の深い山荘で、かつては中原寮のメンバーが交代で管理人をしていたそうで、現在でも中原寮OBの宮下拓也さんが管理人をされています。2014年8月にリニューアルされたばかりで、非常にきれいな山荘です。
山荘では宮下さんから天気図作成についての講義をしていただきました。途中でラジカセの音量が上がらないハプニングがありましたが、宮下さんのアナウンスで天気図を作成しました。ここで、登山において、天気図を読み今後の天気を予想することがいかに重要であるかを学びました。
宮下さんから天気図についての説明を受けます |
9月5日(4日目)
残念なことに、前日からずっと雨が続いています。当初の予定では温暖化試験地等を見学しながら山を降りる予定でしたが、前日登ってきた道をそのまままっすぐ降りることになりました。参加学生が多いですし、安全第一ですね。調査地を見学できないのは残念ですが、仕方ありません。下山中も雨足が強くなったり弱くなったりの繰り返しでしたが、昼前には桂小場学生宿舎にたどり着きました。
みんなずぶ濡れでしたが、馬目さんがとったジコボウ(ハナイグチ)のきのこ汁で暖まりながら昼食を取りました。最後に温泉に行って体を温めてから、食と緑の科学資料館に戻って解散しました。学生の皆さんは最後まで元気でした。お疲れ様でした(学生さんにはレポートとして遡行図や行動記録をまとめる作業が残っているのですが)。
最後に、このような手間のかかる実習をまとめておられる小林先生、荒瀬先生、馬目さんに心から感謝したいと思います。ありがとうございました。
最後に、このような手間のかかる実習をまとめておられる小林先生、荒瀬先生、馬目さんに心から感謝したいと思います。ありがとうございました。