2025年8月4日から8月7日に筑波大学八ヶ岳演習林で行われた「森林フィールド講座・八ヶ岳編~八ヶ岳の森と生物~」の報告をします。
1日目:8月4日(月)
15時頃八ヶ岳演習林の事務所に集合。八ヶ岳演習林の事務所と学生宿舎はJRの最高標高駅である小海線野辺山駅(標高1345.67m)が最寄りです。季節は夏真っ盛りですが、標高が高いだけあり、涼しいです。野辺山駅の近くには、永遠の小学1年生(いや、高校生?)探偵が主人公の2025年のアニメ映画の舞台のモデルになっている国立天文台の宇宙電波観測所があり、昨年訪れたときと比べて賑やかになっていました。受付したのち、宿泊棟に移動し、宿泊の注意事項を確認し、フィールド講座のスタートです。
まずは、フィールドに出るにあたっての安全講習を行いました。フィールドワークは初めての1年生や様々な学部の学生が参加しているので、野外での危険と対策を確認します。例えば、熱中症や蜂、マムシといった動物のリスクです。
その後、スタッフの挨拶も兼ねて、連携大学の紹介を行いました。北海道大学の研究林は面積が広大であること、道内各地と和歌山の各研究林の特徴と行っている調査や丸太を生産していることについて紹介しました。北大生も多数いましたが、研究林をよく知らない学生も多かったので知ってもらえてよかったと思います。山形大学の紹介では山名川演習林の概要と豪雪地帯であることや地域特性を生かした特色のある実習内容の紹介、また、次回の森林フィールド講座の開催についての告知がありました。次回のフィールド講座は冬の山名川演習林でどんな経験ができるのか、わくわくするお話が聞けました。信州大学は標高差のある演習林を有しており、山岳地帯にある演習林には、山小屋もあって、日本で最も高い場所にある演習林として特性を活かした実習が組まれているそうです。高知大学嶺北フィールドでは急峻な地形のなか、60年周期の法正林施業をやっており、面積が小さい中にぎゅっと魅力詰まっていました。琉球大学与那フィールドは世界自然遺産に登録されたやんばる地域に位置していて、大陸島であることによる固有種や希少種が多く生育しているそうです。筑波大学は今回フィールド講座を行った八ヶ岳・川上演習林のほか標高700-2400mにあり急峻な井川演習林(静岡県)がありそれぞれの植生の特徴が紹介されました。
各大学、それぞれの魅力を感じられる紹介があり、ぜひとも、各演習林を訪れてみたくなります。
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↑来年度のフィールド講座は冬季に雪深い山形大学山名川演習林でやります! |
最後に、今回のフィールド講座の4日間で、考えてもらいたい内容が筑波大学清野先生から提示され、オリエンテーションは終了です。その内容は、
八ヶ岳の植物・動物のことを学ぶ3日間が始まります。
2日目:8月5日(火)
2日目午前中は川上演習林で人工林(人の手で苗を植えて育てた森)やこの地域特異の天然林の自然観察と野生動物の観察を行いました。予定では、川上演習林の見学は午後の予定でしたが、午後から雷雨の天気予報であったため、八ヶ岳演習林と比べて標高が高く落雷の可能性が高い川上演習林に午前のうちに行くことになりました。天気に応じて予定を臨機応変に変更するのも、野外フィールドでの実習ならではですね。
川上演習林では人の手で植えたカラマツ、サワラ、ストローブマツの紹介がありました。カラマツとサワラはもともとこの地域に分布する樹種ですが、ストローブマツは北アメリカに分布する樹種です。3樹種ともに幹が通直に成長しやすい針葉樹で、植林されることも多い樹種です。
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| ↑サワラの天然林(伏状更新)の森(左)とサワラの稚樹(右) |
続いて、川上演習林に生息する野生動物を学びます!ここが一番盛り上がったかな~。技術職員の杉山さんによる、演習林に生息する天然記念物であるヤマネの巣箱の観察のレクチャーを聞きます。林内にはヤマネの生息調査のための巣箱が設置されており、研究者や学生によりさまざまな調査・研究がされているそうです。川上演習林は、人工林の割合が多く樹種の多様性が少ないことから、ヤマネの生息数は少ないと考えていたそうですが、調査により1haあたり1.9匹のヤマネが生息していることが分かっているそうです。ヤマネは、樹上性で枝伝いに移動するので、高いところにある巣箱をよく使用します。そのため、筑波大学では、巣箱を昇降できるように設置し、生息調査を行っています。高いところにある巣箱の降ろし方と巣箱の開け方を教わり、巣箱調査の始まりです。早速1つ目の巣箱にヤマネを確認!ヤマネが飛び出してしまった場合は、踏んでしまわないように人は動かないという注意を受けたのち、巣材をそっと取り出し、順番にヤマネを観察しました。今回の実習では、2匹のヤマネを巣箱で観察することができました。眠っているところを起こしてしまってごめんね。
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| ↑巣箱の説明をする杉山さん(左)と巣箱の中の様子(右) |
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| ↑巣箱の様子をそっと覗く(左)と枝に乗るヤマネ(黒目が大きく可愛い)(右) |
午後は、八ヶ岳演習林で湿地林と広葉樹2次林の自然観察を行いました。八ヶ岳演習林は八ヶ岳の山麓の平坦な場所に位置しています。周囲は農地で囲まれていて演習林だけぽっかりと森が残っているような場所です。その中に歩道が整備されており、歩道を歩きながら、野辺山に生育する広葉樹や、希少な湿地性植物を教えてもらいました。
野辺山の特徴的な樹種として、ヤエガワカンバを教えてもらいました。ヤエガワカンバは、中部山岳地域と北海道の足寄に隔離分布している樹種で、シラカンバやダケカンバに近い樹種ですが、樹皮が特徴的で、ごつごつとしており重なって剥がれます。ダケカンバの樹皮が分厚くなったイメージでしょうか。ほかにも、和製ヘーゼルナッツであるハシバミの木や果樹のリンゴを育てるための台木となるズミの木など、私たちの生活にも関連する樹種を教えてもらい、学生たちは興味深そうに聞いていました。
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| ↑和製ヘーゼルナッツ、ハシバミの葉と実 |
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| ↑広葉樹二次林を散策(左)と順番にモウセンゴケを観察(右) |
筑波大学八ヶ岳演習林が取り組んでいる希少種保護について、技術職員の井波さんから教わります。一つ目は昨年、構内に人工的にビオトープを作り、「生息域外保全」に取り組んでいるタルマイスギですタルマイスギは長野県内では野辺山のみ生育している絶滅危惧種ですが、その生息地が開発されることにとなり、最後の手段として生息地ではない、八ヶ岳演習林の構内で保全に取り組むことになりました。また、長野県と山梨県に県境付近(本当に、日本国内、この地域だけ!)にのみに生育している大変稀なヒメバラモミを構内に植林し、育てています。自然環境下では、芽生えてもシカに食べられることもあり、大きく育たないことも多いのです。そのため、ここでは鹿柵を設置して、シカの害から守っています。ヒメバラモミの葉はとても尖っていて触ってみるとちくちくしました。植物の特徴を触って確かめることができるのも、実習の魅力です。
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| ↑タルマイスギ域外保全のために作ったビオトープ(左)とヒメバラモミの植林地(右) |
3日目:8月6日(水)
今回の講座の課題の一つである、八ヶ岳の植物についてですが、1日目に筑波大の清野先生に標高の違いによる、植生の違いを教えてもらいました。2日目には、八ヶ岳山麓の標高1000mほどに位置する八ヶ岳演習林を見学しました。そして3日目は、バスで麦草峠へ行き、八ヶ岳の標高2,000mを超える亜高山針葉樹林の観察です。野辺山も涼しかったですが、さらに標高が上がり、肌寒いくらいでした。八ヶ岳の亜高山帯では、常緑の針葉樹であるシラビソ、オオシラビソ、トウヒ、コメツガが分布します。亜高山帯では森の木々はゆっくりと成長するので、サイズは小さくとも思ったより年齢が高い木が多いことを教わりました。麦草峠の特徴としては、太平洋と日本海のちょうど中間に位置するため、その両方の特徴を持つ森が成立しているとのこと。例えば、雪に対して強く日本海側に多く分布するオオシラビソと、乾燥に強く太平洋側に多いシラビソが混生しています。八ヶ岳演習林と比べて、同じ地域でも標高によって、植生が変わっていくことを実際に見ることができました。さらに、植生は、標高だけで決まるわけではないので、麦草峠周辺で、地形や風、地質の条件により、通常であれば、さらに標高の高いところに成立する高山帯植生を見ることができます。そこでは、高く育つ木が少なく、ハイマツやコケモモといった地を這うように育つ木を見ることができました。
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| ↑散策MAP/白駒の森と奥庭そして白駒の池をぐるっと一周しました |
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| ↑麦草峠の植生の説明を聞く(背が高い針葉樹が多い)(左) 高山帯(樹高は人と同じくらい)を歩く(右) |
その後、白駒池をぐるりと一周散策しました。1時間くらいでしょうか。学生それぞれ植物やキノコなど、思い思いに興味を持って歩いていたことが印象的でした。
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| ↑白駒池(左)とそのまわりに広がる苔の森(右) |
3日目の夕飯は最終夜ということで、BBQです。筑波大演習林の造材現場(木を伐って丸太を売る現場)で出た、カラマツを使ったスウェーデントーチや端材を利用した焚火も配置されていい雰囲気でした。メニューにはシカやイノシシといたジビエのジンギスカンを食べ、野生動物の問題についても考えながら、美味しくいただきました。
夕食後も、各々、火を囲んで語り合ったりと、話はつきないようでした。学部1年生から大学院生まで、また、学部や研究分野が異なメンバーが集まっているからこと、それぞれ、刺激を受けあっている様子で、とてもいい時間だったように思います。
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| ↑苦労して火を起こしたBBQ台を囲んで乾杯(左) すっかり日が暮れて焚火を囲みながら語らう(右) |
4日目:8月7日(木)
最終日は初日に提示された課題について、4~5名のグループごとに発表を行いました。まとめる時間も短いなか、3日間で感じたこと、考えたことをそれぞれの興味とともに発表してくれました。フィールド講座は、いろいろな大学のさまざまな分野を学んでいたり、興味を持っていたりする学生が集まっていることもあり、個性が出ている発表が多く、面白かったです。
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| ↑3日間の成果の発表 |
大学生の今だからこそ、参加できるフィールド講座です。フィールド体験に来るもよし、いろんな学年、いろんな分野の学生にあって刺激をもらうもよし、少しでも興味があれば、ぜひ参加してもらいたいと思います。
苫小牧研究林 原













