2018年9月3日月曜日

琉球大学 公開森林実習「亜熱帯林体験実習」



2018819日~22日(34日)に開催された琉球大学の公開森林実習「亜熱帯林体験実習~亜熱帯林が広がるやんばる地域での人と自然の共生~」に拠点事業の一環として参加しましたので、ご紹介します。
 
担当:北管理部 吉田




北大研究林は、全国の大学研究林(演習林)と連携しています。
そのひとつ、琉球大学の公開森林実習に参加してきました。

実習の舞台は、沖縄本島北部「やんばる」に位置する、琉球大学与那フィールドです。
「公開森林実習」ということで、全国6大学から10名の学生さん(スタッフとして琉大の学生さんも3名)が集まりました。
賑やかです。
よろしくお願いします。

公開森林実習は、全国の大学演習林で開講されている、他大学生の参加が可能な実習です。http://www.fsc.miyazaki-u.ac.jp/foe/

16大学の農学部間の協定で、単位互換の制度もあります。
協定校以外の学生でも受け入れ可の実習もありますので(「亜熱帯林体験実習」もそうでした)、チェックしてみてください。
北大での実習もありますよ!



今回、初日は夕方集合。
与那フィールドの高嶋先生が、亜熱帯の特徴や、やんばる地域の森林・動植物についてじっくり説明してくださいました。

この実習の大きなテーマのひとつが「自然との共生」。
やんばる地域は、2016年に国立公園に指定され、また、今年度の登録は見送られましたが、世界自然遺産を目指しています。
その、ど真ん中にある演習林とは、すばらしいですね。
私も普段、森林の利用と保全について研究をしているので、このあとのプログラムがとてもたのしみです。
北海道との大きな違いは、歴史・文化を含めた、人と自然との「近さ」でしょうか。
その「距離」次第で、共生のしかたも変わるはず。どんな問題があり、解決策があるのでしょうか。
受講生からも、活発な質問がありました。

夕飯後はナイトウォークに出かけました。
(写真がありません。この報告より数段充実している、昨年度の記事をぜひ参照してください)
http://frs-kyoten.blogspot.com/2017/09/no1.html 

 

2日目。
研究林内の林道を散策します。


おもに植生を観察しながら、亜熱帯林を満喫します。
高嶋先生、技術職員の外間さんらが、丁寧に解説してくださいました。

優占種であるイタジイ(ブナ科)
このような大径木(直径>40cm)は、かつての伐採時の伐り残しで、数は多くないとのこと。
ノグチゲラやケナガネズミ、ヤンバルテナガコガネなど、沖縄固有種の多くが、大径木に依存して生活しているとの説明がありました。
 

こちらも優占種のひとつである、イジュ(ツバキ科)の花
時期ではないのですが、いくつか開花している個体がありました。
6月に来てみたくなります。


リュウキュウマツ(マツ科)
マツ枯れの影響があるそうですが、健全な大径木は存在感があります。


リュウキュウマツが優占する景観


リュウキュウコクタン(カキノキ科)
高級材好きにはたまらない存在です。
これは44年生の造林地。成長には時間がかかるようです。

イヌマキ(マキ科)
こちらも高級材の樹種。造林は、虫害の影響があり難しいとのこと。


ハリギリ(ウコギ科)
高木種では唯一北海道と共通する構成種でした。
リュウキュウハリギリと分類することもあるそうです


ヒカゲヘゴ(ヘゴ科
木生シダ。形状や模様に見入ってしまいます


この日の最高気温は32
北海道では感じられない日射しの強さですが、木陰は意外に快適に歩けました。
学生スタッフの皆さんのサポート体制も充実していて、感謝です。


宿舎に戻って昼食の後、午後はまず、沖縄本当北端の辺戸岬へ。
青い空!青い海




与那フィールドの里山研究園。
琉大の学生さんが、卒論でとりくんでいるオキナワシャリンバイ(バラ科)の植栽試験地について説明。
樹皮が紬の染料に用いられるそうです。
ここには他にもモッコク(モッコク科:器具材)、ナギ(マキ科の針葉樹:器具材)の試験も行われていました。
マツ枯れの影響など、リュウキュウマツの造林に懸念がある中、付加価値の高い代替樹種の探索はとても重要なテーマだと理解できました。成果を期待しています!



午後、後半のテーマはヤンバルクイナです。
東海岸を南下し、生態展示学習施設をたのしんだ後、夕方、野生の1羽にも会えました。
待つこと15分位、藪の中でしたが、道路から見えるポイントに、われわれが帰るまでずっと佇んでいました。


夕飯は、地元の方々手作りの沖縄料理をおいしくいただきました。
その後、講義と続きます。ハードですが、充実した1日でした。

 
3日目。
この日は台風19号の進路が心配されたのですが、幸い、雨にも降られず予定通り出発です。



サンゴの白砂の海岸に立ち寄りました。
風が強く波もありましたが、心配したほどではありません。
こんな青空が見えるとは思いませんでした。
 
 
その後、環境省の施設「ウフギー自然館」へ。
アクティブレンジャーの佐藤さんに、スライドで解説をしていただきました。

自然館の地図で高嶋先生が説明。
今日から合流してくださった琉球大学の芝先生(手前)にも
いろいろ教えていただきました。
 
東海岸に移動し、慶佐次川のマングローブ林を訪問。
多様性の高さに感銘を受けました。

 
午後は、与那フィールドに戻り、試験地の見学です

説明してくださった琉球大学の松本先生
高さ15mのタワーに登る前の説明です。
前日夜の講義でも詳しく解説してくださったのですが、この森林では
・タワーでの計測による炭素循環は、熱帯林に比肩する
・純一時生産量の高さに比して、蓄積量は多くない
・枯死量、土壌呼吸量がきわめて大きい
・蒸発散量も、熱帯林と同等のレベル
とのこと。

枯死の多さは頻繁な台風の影響に起因しており、分解過程が相対的に卓越することが生物多様性の高さに寄与している、というのはとても新鮮で、魅力的な仮説でした。





タワー上部からの眺望
台風接近の予報から、上に登れるとは期待していませんでしたが、ラッキーでした。
幹が目立つのがイタジイ。
梢端部の枯死が多い様子がよくわかりました。



タワーを下った後、森林内部での物質循環の調査について。
松本先生の研究室の大学院生が、成長量、リター量、呼吸量(幹・根・土壌)、流下雨量…と順番に説明してくれました。
成果がたのしみです。
毎木調査では、50m四方で40種くらい出現するとのこと。多様性が高いです。


試験地の沢沿いに残る、オキナワウラジロガシ(ブナ科)の大径木。
見事です。
 この日の夜はバーベキュー。
芝先生、技術職員の知花さん、外間さん、研究員の知念さんから、興味深いお話をたくさん伺いました。
参加した学生さんともいろいろ話ができました。
(次はぜひ北海道にも来て、日本の森林の幅広さを感じてくださいね!)

翌朝。
名残惜しい最終日です。
この日の午前は、レポートの作成。
毎晩、熱心にまとめた内容を提出してもらいました。
「人と自然との共生」、学生の皆さんはどう感じ・考えたでしょうか。
希少種保全の取り組み、それを観光資源として活用する取り組みを見学しました。
一方で、やんばるの森が、沖縄本島全体の水源をまかなうことも学びました。

私の主要な興味である林業(木材生産)に関しては、
・大径木に頼ることができない
・多様度が高く「量」では特定の樹種に絞ることができない
・マツ枯れの懸念がなお大きく、一方、他の広葉樹などの造林手法は確立されていないものが多い
・風撹乱が頻繁である
などの課題が、よくわかりました。
保全活動と調和させながら、どのように木材需要をまかなうのか…今後の琉大の皆さんの取り組みに注目したいと思います。

亜熱帯の魅力をコンパクトにまとめて体験できたこの実習。
私はすっかり、やんばるのファンになりました。
来年度も、多くの皆さんの参加をお待ちしています。
高嶋先生をはじめ、琉球大学のスタッフの皆さまにはたいへんお世話になり、あらためてお礼申し上げます。
施設もきれいで使いやすく、快適に過ごしました。
どうも有難うございました。

北管理部 吉田



2018年8月29日水曜日

森林研究・フィールドトレーニング「天然林で森林施業」

2018810日~814日(45日)に雨龍・中川研究林で開催された「天然林で森林施業」についてご紹介いたします。


今年も開講しました「天然林で森林施業」。
 
このプログラムは、針葉樹と広葉樹の混交林など、北海道の天然林をフィールドとして、その特徴と森林施業について学びます。
今回は、遠路はるばる、岐阜から二人の学生さんが研究林に来てくれました。
二人とも学部1年生!
「天然林の広葉樹について学び、将来、地元の森林管理に活用したい」「生態系保全と森林資源について学びたい」と、まずは、新鮮な抱負を語ってくれました。


研究林内のさまざまな森林を散策
5日間の日程。
まず、最初の2日間は、二人の興味を最大限参考に(←少人数プログラムのいいところです)じっくりと研究林内を回ってみました。


中川研究林の「ビッキのアカエゾマツ」。研究林内には多くの大径木が残されています

こちらは渓畔林。いろいろな種類の木の成育状況を解説します。岐阜と共通する木も多いかも

森林施業の現場も訪れました。
それぞれの目的や方法の詳細もちろん、その課題や問題点についても学びます。



中川研究林の大面積・長期施業試験地を説明。残雪期の調査について話したところ、
冬にも来たい!と盛り上がりました

雨龍研究林の天然更新地の調査プロット。
大学院生(写真を撮っているので写ってません)が、研究の意義とともに、調査のたのしさ・大変さを伝えます



3日目、それぞれ興味を持ったことを振り返り、今回取り組む課題について考えました。
お、なかなか鋭い着眼点! 何を・どうやって調べたらよいか、を話し合います。


午後は少し休憩…
旭川方面に出かけました。
まずは旭川市にある「旭川デザインセンター」。
天然林材を用いた多くの家具が展示されており、最近は北海道産材の比率を高める動きがあることを学びます。展示場は、素敵な家具が多く、なかなか足が進みません。。。

 
その後、北の住まい設計者さんのオープンハウスへ。ここでは、研究林から伐り出された木が住宅に使用されている様子を見学できました(見学させていただき、どうも有難うございました)。


天然林の材からつくりだされた板(今回撮り忘れたので以前の写真です)

せっかくなので周辺観光ポイントにも少し立ち寄って絶景をたのしみ、帰途へ。
帰りはすっかり遅くなってしまいました…


雨龍研究林の施設で木工作業も体験してもらいました。
森林技能職員がたくさんおみやげをくれました!

そして、4日目、プログラムのハイライトの一日です。
昨日考えた目的をもとに研究計画を立案し、一日、実際に雨龍研究林のフィールドで調査を行いました。



ひとつめのテーマはキハダの天然更新。
1年目の実生を探してマークしていきます
もうひとつのテーマはシラカンバとダケカンバ。
両種の判別をしています




この日は天候が心配でしたが、なんとか雨には降られずに終えることができました。
夜は北海道名物のジンギスカン

おいしいご飯を食べて早く休みたいところですが、そのあともデータ整理。頑張りました。 
 

最終日の午前中も、まとめの続きです。
 

パソコンで発表準備。
「慣れない」と言いながら、器用に仕上げてくれました。さすが。
 
午後、このプログラム最後のメニューは成果発表です。
大学院生に加えて、森林管理のプロである、研究林の技術職員にも集まってもらいました。


発表時間はひとり15分。
緊張したと思いますが、技術職員からの質問にもしっかり受け答えしてくれました
 
半日ずつの調査結果とはいえ、興味深いデータもありました。
2つとも、今後発展させていきたいテーマなので、今回はとても有意義な予備調査にもなりました
 
 
今回、研究体験の感想はどうだったでしょうか?
短い時間でしたが、二人の当初の抱負「広葉樹を活かした森林管理」「生態系保全と森林資源」について、視野が広がり、興味が増したなら嬉しいです。
まだ学部1年生のふたり。
このプログラムへの参加を契機に、この先も、森林の施業や管理についてさらに勉強を深め、将来はぜひ、天然林に関わる人材に育ってほしいと思います。

 
また来てください!
 


 
担当:北管理部・雨龍研究林 吉田



 

 

2018年6月20日水曜日

森林圏科学特論Ⅲ@雨龍研究林

技術補佐員の田守です。
2018年6月11日~14日にかけて雨龍研究林で行われた、環境科学院の実習形式の集中講義「森林圏科学特論Ⅲ」についてご紹介いたします。

この実習には11名の学生が参加し、野ネズミやエゾシカの野外調査、カエルやサンショウウオの幼生の個体数と形態の関係性、昆虫類の遺伝的多様性と種多様性の分析など様々な森林動物について学びました。
最終日には調査・分析結果をもとにした研究成果を発表し合い、理論・データ・解析・議論など研究に関わる一連のプロセスについて理解を深めることができました。

1日目。
雨龍研究林宿舎に到着です。ここで4日間お世話になります。
 

部屋に荷物を運んだら、さっそく実習スタートです。
ガイダンス後、午後の実習で使用するトラップの準備です。


お昼休憩をはさんで、いざ動物たちの暮らす森へ。
齊藤先生の説明に熱心に聞き入ります。
班毎に分かれてトラップを設置します。
目印も忘れずに!
パンチューも設置。捕まって欲しいような欲しくないような・・・

鹿の足跡

足跡発見。よし、ここにカメラを仕掛けよう。


場所を移動して,今度は昆虫用のバケツトラップを仕掛けます。
パチンコを使って枝を狙います。

高さを変えてトラップを仕掛けます。
事前に仕掛けてあったこちらでは、ハリガネムシの調査をしています。
ハリガネムシ・・・寄生虫の一種なのですが、とてもおもしろい生活をしています。

豪華な夕食の後は、ライトセンサスです。
バスに乗り込んで暗闇を進みます。

何も見えませんが、ライトで照らす先にはシカがいます。
約1時間の調査で、 22頭のシカを発見することができました。


2日目。
1日目に仕掛けたトラップの見回りから始まります。

捕ったどー


逃がさないように慎重に袋に移して・・・


みる!


性別を調べて重さも量ります。
続いての実習はトンボ採集です。
あいにくこの時期の北海道ではまだ成虫を採るのは難しいので、今回はヤゴ採集です。
トンボ博士の山中先生に筑波からお越しいただき特別授業です。

こうやって足でガってやって・・・
先生のお手本の後は、川・湖・湿地の3箇所に分かれて採集スタートです。
どれどれいるかなー
(ミズバショウ育ちすぎー)
発見!
 
ヤゴかなーちがうかなー


結果発表はまた後ほど・・・


お昼休憩をはさみ、午後は魚類の調査のためブトカマベツ川へ向かいます。
調査のため雨龍研究林に滞在中の、京都大学の宇野先生・管野さん・由井さん・セーニャさんにご指導ご協力をいただきました。
電気ショッカーで魚を一時的に麻痺させて、そのすきに網ですくい上げます。
イワナやヤマメがたくさん捕れました。
上の白いバケツの中はクローブ油を少量垂らした水です。
この水で魚に麻酔を施し、その間に体長を計測したりします。

メスで小さい穴を開けて、そこからマイクロチップを埋め込みます。

口から水を注入して、胃内容物を吐き出させます。
小さい魚なのでプレッシャーのかけ方に要注意です。


台風の影響もあり雨の中での実習でしたが、みんな積極的に体験させてもらっていました。
なんでもウェーダーを着ると無敵になれるそうです。


ブトカマベツ川での調査の後は、岸田先生の両生類の講義です。

サンショウウオの幼生が入った容器と入っていない容器の
それぞれのおたまじゃくしを観察し、違いについて考えます。



下から見たり 横から見たり 定規で測ったり スキャンしたり 


最後に、この違いにはどんな理由が考えられるか発表し合いました。



夕食後、夜の講義はトンボ多様性について学びます。山中先生の開発した「トンボウォッチ」というアプリを使って、午前中に採集したヤゴの数で得点を競い合いました。


スマホをいじってサボってるわけではありません。



これは1点です。

優勝チームにはオリジナル缶バッチが!おめでとうございます。
3日目。
今日もトラップの見回りから始まります。
前日に習ったとおりにできるかな


ご協力いただいたネズミさんたちを森へリリースしました。
達者で暮らせよー
パンチューでも2匹捕まえましたが、こちらは捕殺トラップのため、この後の標本製作で・・・
まずは齊藤先生による実演


しっぽの長さや重さを調べて・・・


ハサミに持ち替えて毛皮を剥いでいきます。みんな真剣です。


完成

午後は内海先生による昆虫の講義です。
1日目に仕掛けたバケツトラップを回収して、さっそく中身を確認していきます。
トラップ毎に捕まえた昆虫を並べて、群集構造の違いを見ていきます。

仕掛けた場所や高さによって、入っていた昆虫も様々です。



群集を座標化し作図することで、群集構造の違いについて理解しやすくなりました。

夕食の後はいよいよ課題の準備に取り掛かります。
先輩の話だと徹夜もあるとかないとか・・・いっぱい食べてがんばろう!

最後の晩餐は豪華すき焼きです。
食後の団欒タイム
4班に分かれて、夜遅くまで準備しました。
先生から説明を受けて

パソコンとにらめっこ

4日目。
課題発表会。
4日間の成果を出し切りました。        他の班の発表にも積極的に質問をしたりしていました。


最後は初日に設置した自動カメラ映像の上映会です。
今回の結果は残念ながらあまり満足のいく映像ではありませんでしたが、過去の傑作集を見せてもらい、野生動物の行動を垣間見ることが出来ました。
 
おまけの熊
4日間という短い日程ではありましたが、とても濃厚で充実した4日間でした。
最後に記念撮影