2015年6月22日月曜日

シカと森林の関係

長田です。今回は苫小牧研究林を利用している九州大学大学院システム生命科学府の岡部憲和さんの研究を紹介させていただきます。

岡部さんは、シカと森林の関係に興味を持っており、シカによる食害の影響の大きい森林で被害状況を調べて、森林が今後どのように変化するのかを予測したいそうです。主な調査地は屋久島の森林なのですが、他の森林にも興味があるそうです。



苫小牧研究林付近でも近年シカが増えていて、シカによる食害が広がっています。また、2004年には台風18号が研究林を直撃したために林内の約1/3の樹木が倒れ、林冠の空いた“ギャップ”ができました。これらの影響で、林床植物の分布パターンが長期的に変わってきているようです。

苫小牧研究林はシカがたくさんいます

というわけで、岡部さんは屋久島だけでなく苫小牧研究林でも調査をはじめました。苫小牧研究林ではササに着目して調べています。ササは林床に優占して森林の物質循環や樹木の更新に大きな影響を与えることため、ササの分布がどのように変化しているかを理解することは大事なのです。過去と現在のササの分布パターンを比較して、ササの分布パターンがどのように変化しているかを明らかにしたいとのことです。


場所によって林床にササが群生します

苫小牧研究林の面積は2700haもあり、林内にはササがあるところと無いところがパッチ状に存在しています。このため、林内のどの場所にどんな種類のササが分布しているのかを正確に把握するのは容易ではありません。岡部さんは、この広大な研究林内をくまなくまわり、ササが分布している場所や範囲、種名を丁寧に記載していました。地道な作業ですね。

林内をまわり、ササを見つけたらGPSで位置を落として種名を確認します

ササの種名を確認しています

まわった林道を地図に書き込んでいます

ひたすら林内をまわったあとが記されています

岡部さんによると、昔と比べてだいぶ分布域の変わってきている種がいるとのことです(昔のデータが残っているのも研究林のいいところですね)。このように植物の分布状況を記録していく作業は地道で大変ですが、文明の利器(GIS)を使った解析によって今後いろいろなことがわかってくることでしょう。




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