去る8月3日-8日の間で天塩・中川研究林を舞台に、森林研究・フィールドトレーニングコース「温暖化研究のい•ろ•は」を開催しました。
このプログラムでは、事前に教員たちが提示したいくつかの「温暖化に関する疑問」の中から各自が取り組みたいものを選んできてもらい、文献レヴュー、仮説設定、野外調査、データ解析、仮説に対する答えを導きだすという一連の研究活動を経験してもらいました。
やる気のある学生と、そのパッションに答えようとする教員との相乗効果のなかで「体験」というにはあまりにDeepな、充実した内容のコースとなりました。以下に各日の内容を簡単に紹介します。
今回は3人の学部2年生が参加。
コース初日。簡単なガイダンスの後、早速、温暖化研究を進めている現場を色々と見学します。
赤外線ランプを用いて土壌を暖めているサイト |
電熱線を土壌に埋めているサイト |
標高差を利用して、気温と生物活動との関係を調べているサイト |
いろんな方法で温暖化研究を進めていますが、どの方法も一長一短であることを学びます。
見学したあとは、考えてきてくれた疑問とその答えに対する予想、研究の進め方案を発表してもらいます。
みなさん良い感じで妄想しています。まずは妄想が大事。論理展開に無理があったり、もっと面白くなりそうなことがあるので、翌日も更にDiscussionを続けて研究計画を立てていきます。
2日目はずーっと会議室に缶詰。
野外に行って、何かデータをとることは体力と根性さえあればできますが、それを新規性のある、意味のある研究に繋げるには、論文を読み込み、取り組もうとしている疑問に関連して何が分かっているのか/いないのかを知る必要があります。Web of Scienceなど文献検索データベースを利用してのはじめての論文検索はなかなか苦戦しますが、なんとか各自「わかっていること・いないこと」を見つけることができました。
文献検索が終わったあとは、初日に考えてきた疑問についての仮説をブラッシュアップして再発表。厳しい突っ込みや、追加のサジェスチョンを受けながら、計画を鮮明にして行きます。
議論の末に形が見えてきた所で、調査や実験計画を練り、道具を準備。
明日は晴れるかな?
3日目、ようやくフィールド調査!しかしなぜか、この日だけ雨。普段の行いの良さが如実に現れますね。
さて、この中の誰が雨男・雨女だ!? |
ある者は年輪解析用の成長錐を抜き、またある者は食害解析用の枝を切り落とし、またある者はミミズや土壌をサンプリング。
夕方からは、とって来たサンプルの処理や計測を開始します。
みんな真夜中まで頑張っていました。
葉っぱの食害度や大きさを測る人 |
年輪を測る人 |
ミミズを実験用に捕まえる人 |
4日目。調査や室内実験のデータが出ててきた所で、この日はデータ解析と翌日のプレゼン準備です。マンツーマンでの指導にも熱が入ります。
「起きてるっ?」
「zzzz….はいっ!」
「それ、CNB仮説と矛盾してるんじゃない?」
「うーん、なんだか頭がこんがらがってきたー」
いい感じでカオスになっています。この日も終わったのは1時を過ぎ…
外にでるとヒンヤリした空気と一面の星空が迎えてくれました。
5日目。いよいよ最終日。今日は一週間の成果をもとに研究発表です。
3人が取り組んだのは、
① 道北に生育するカラマツ•ダケカンバの成長に影響を与える環境要因は何か
② ダケカンバとCNB仮説
③ 温暖化がミミズによる有機物分解速度に与える影響
– 個体サイズと競争関係という視点から-
という三者三様のテーマです。
示される意外な結果、奇麗に得られたパターンの数々 - ついみんな興奮して、「ここは学会か?」というくらい純粋な、白熱した議論がされました。
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世界の誰も知らないことについて、森に出かけていって自分で集めたデータから浮き上がってくる事実を前にしたときの興奮、3人とも味わってもらえと思います。
このコースを通じて、そんな森林フィールド研究の醍醐味にはまってもらい、今後の学生生活に活かしてもらえたらと思うばかりです。
Scientificに熱い夏になったでしょうか。
また、この北の森で会いましょう。
参考
・高木研究室の連絡先など http://forestcsv.ees.hokudai.ac.jp/ja/staff/#fefr03
・小林研究室のHP https://sites.google.com/site/agotobaobab/
・中村研究室のHP https://sites.google.com/site/zhongcunchenghongnohp/
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