2015年8月28日金曜日

森林研究・フィールドトレーニング「昆虫―植物相互作用の生態と進化」 第二部レポート

ふたたび雨龍研究林の内海です。
前回は「森林研究・フィールドトレーニング」のプログラムB「昆虫―植物相互作用の生態と進化コース第一部(7/27-31)」について書きました。(前回記事はこちら
今回はその第二部(8/10-14)のレポートです。



第二部の参加者は弘前大学3年の佐藤美桜里さん。「7/27-31は試験中で参加できないが、試験が一段落する8/7以降で参加できないか」と問い合わせてきてくれたもう一人の勇者です。

今回もまた初日は、自分の目と興味のままに雨龍研究林の森をみてもらいました。
鋭い観察をしていく佐藤さん。いくつかのアイデアが出てきた中で、特に注目したのは林道脇によく生えているオオヨモギとそれを取り巻く昆虫たちでした。

ある個体にはアブラムシがコロニーを形成し、アリがたかってきています。

一方で、こんなオオヨモギも。葉に変な形のものがついています。
こちらはタマバエという昆虫の産卵刺激によって植物組織の成長が改変されて形成されます。
 
なぜ、オオヨモギに注目したのでしょうか。佐藤さんは観察を続けるなかで、「アブラムシがいると、あるいは虫こぶがあると葉の食害が少ない」「アブラムシと虫こぶは排他的な分布をしている」というパターンがあるのではないか、と感じました。さらに、アブラムシや虫こぶが寄生することが植物の側の防衛に役立っているのではないか、ということも考えました。これらの予測を検証してみたいというのがこの系に注目した理由でした。防衛に貢献しているかどうかを検証するためには、アブラムシの寄生や葉の食害を実験的に操作した上で植物の繁殖成功度を調べる必要があるため、今回の実習では検証することができません。そこで、フィールドでアブラムシ・虫こぶ・葉食害度などを定量的に調査し、予測を支持するパターンが存在するかどうかを検証していくことにしました。


さて、二日目以降はフィールドワークをガンガン進めます。

カウンターでアブラムシを数える佐藤さん
天候には実習期間を通してめぐまれませんでしたが、時間の許す限りデータをとりました。設置した方形区が13個に調査株は117個体!しかも環境の異なる2地点まで考慮に入れるという本格的な野外研究です。虫のデータだけでなく、植物のサイズやSPADの計測も行いました。


二日半の調査を終えて、今回もまたデータの整理にグラフ化、そして成果発表を行ってもらいました。
データもかなり集まったので、整理してグラフ化することは大変だったと思いますが非常にしっかりとした発表をしてくれました。



気になる結果は・・・?
グラフと結果は多岐に渡るのですが、今回の調査データでその場でやってみた構造方程式モデリングの結果(ベストモデル)のみ紹介します。


モデルの当てはまり具合も非常によく、見事に佐藤さんの仮説を支持する相互関係が推定されました!すごい。


さて、これで「森林研究・フィールドトレーニング」プログラムB「昆虫―植物相互作用の生態と進化」コースのレポートはおしまいです。
参加してくれた学生たちの視点や主体的な取り組みにはとても感銘を受けました。


参考:内海研究室のHP https://sites.google.com/site/evocomecol/home

0 件のコメント:

コメントを投稿