2023年9月21日木曜日

琉球大学公開森林実習「亜熱帯林体験実習」2

実習2日目後半!

続きましては琉球大学の松本先生による研究フィールド紹介です。

実はここで始めて琉球大学の与那フィールドの森林内部に入りました。
松本先生は森林水文学や森林生態学がご専門で、世界各地で研究してきた方です。与那フィールドでは1棟の気象観測タワーを管理しており、温湿度・風向風速・光・などの気象状況や光合成量・炭素吸収量など森林内での炭素循環などを研究していらっしゃいます。
15mのタワーの上からは広大なやんばるの二次林が一望できました。 
台風時には風速50m以上を観測することもあるそうです。

タワーの下には50m✕50mの調査プロットがあり、3年おきにすべての樹木の毎木調査を行い、成長量・種構成のモニタリングを行っているそうです。
沖縄の森の大部分は戦後の復興時期に強度の伐採が入り、その後の天然更新による二次林が広がっています。

林内で見つけた巨大なヤンバルヤマナメクジ

かわいらしいキノボリトカゲ
 
2日目の夜は高嶋先生、松本先生、私 間宮による研究紹介が講義室で行われました。
高嶋先生は与那フィールドや沖縄の自然について、松本先生は森林動態について、間宮からは北大研究林の紹介とドローンの活用についてをスライド形式で発表しました。
長くなってきたので詳細については割愛(していいのか?)します。

<3日目>
3日目も快晴です!暑いです!
 
実習3日目、最初は私担当のプログラム「ドローンデモ飛行」です。

実際に業務で使っているドローンを持って行き、皆さんに操縦していただきました。前日の夜にどんなふうに活用しているかや、法律関係など気をつける点をスライドで解説しましたが、やっぱり実際に触ってみないとね!


さて、続きましては高嶋先生解説による与那フィールド森林見学です。

初日にナイトウォークで通った道を歩き、フィールド内へと向かいます。当たり前ですが夜と昼とでは景色が全く違いますね。

道すがら樹木を中心に土壌や地形についても解説していただきました。

この地域は沖縄のほとんどの森林と同じように過去に人の手(伐採)が入った場所で、あまり太い木がありません。 しかしたくさんの種類の植物が生い茂っており、亜熱帯の更新力の強さを感じます。

イタジイ、センダン、アカギ、ニッケイ、ハデノキ、イジュ、ガジュマル、クスノキ、イスノキなどなど

宿泊施設前のガジュマルの木 枝から生える気根が特徴的です

与那フィールドのほとんどは国立公園となっています
 
モクマオウ
針葉樹に見えるがモクマオウ属の常緑樹
葉に見えるのは実は小枝で、退化した葉が鱗片状に付き光合成している
緑化植物として移入された外来種です


 見学を終えて戻ってくると、施設の前にリュウキュウイノシシがいました!
小さいので(体長50cmくらい)子供かと思いましたが、小さめの成獣だそうです。

 

そして、なんと職員の方がシークワーサージュースを作ってくれていました!
与那フィールドの技術職員さんの畑のシークワーサーだそうで、暑い中歩いて疲れた身体に染み入りました!


3日目の午後も与那フィールド内の森林見学ですが、今度は奥の方の世界自然遺産となっている地域です。沖縄本島北部が世界自然遺産として登録されたのは実は最近のことです。奄美大島、徳之島、西表島とともに2021年7月に登録されました。地域固有種が多く独自の進化を遂げた種の例が多く存在するものの、やはり多くの地域で人の手がすでに入っていること、現在も人の生活と深く関わっていることが「自然」遺産としてなかなか登録されなかった事情のようです。

これまでも国立公園に指定したりと、自然環境の保護を継続的に行ってきましたが、今後も生物相の保全がこの地域に課せられた重要なテーマとなるとのことでした。

一方で、人間活動とも密接に関係していることは紛れもなく、単純に「保護」か「開発」かで線引できる問題ではありません。「自然との共生」というテーマで考えていく必要があるのではないかとのことでした。

 

前置きが長くなりましたが、いざ世界自然遺産の森へ!

  沖縄の土壌は薄く、根が深く張れないので板根が発達しています。かっこいいですね!
 
午前中とは変わり大径木があちらこちらに立っています。この地域は過去にあまり伐採が入らなかった地域であり、人間活動による撹乱が少ないということです。ただし台風による自然撹乱は大きく、なかなか極相林にはなれないとのこと。
なるほど。見てみると大径木もあるものの、小径木が密生しおり、常に遷移が繰り返されているという印象を受けます。
 
これはなんだかわかりますか?

正解はエビフライ、ではなくて天然記念物であるケナガネズミが食べた後のリュウキュウマツの松ぼっくりの芯です。北海道でもエゾリスが食べた松ぼっくりの芯をよく見つけます。

ケナガネズミは日本のネズミ類の中で最も大きく、体長は20~30cm、尾も体長と同じくらいの長さがあります。実はこのネズミ、樹上に棲んでいます。イタジイなどの樹洞に巣を作り、夜な夜な木の実や昆虫などを食べているそうです。
そう、樹洞です。 樹洞は主に広葉樹にできる、木部が腐るなどしてできた空間のことです。大径木にはこの様な樹洞がしばしばあり、ケナガネズミなどの希少種の生息場所として非常に重要です。


続いて向かったのが更に北部(ほぼ沖縄本島の北端)にある与那フィールドの施設、里山研究園です。

その前に道中、ヤンバルクイナのロードキルの実態について解説がありました。


実習1日目でも触れましたが、マングースの食害は減ったものの、ロードキルは未だ解決しておらず、今年も22羽のロードキルが確認されているそうです。
道のあちこちに注意喚起の看板が設置してあったりしますが、なかなか減らないとのことです。観光客、地元の方双方への啓発活動が重要となってきます。 


さてさて、やってきました里山研究園

ここでは試験的な植栽、木材生産などを行っており、将来的に沖縄の林業に組み込むことができないか研究されています。
沖縄は本州や北海道のように大面積の針葉樹人工林というものがなく、林業が主力産業とは言えません。ですがリュウキュウマツやイタジイなど、亜熱帯特有の樹種が多くあり、希少な木材といえます。現在の主な人工林はリュウキュウマツですが、広葉樹林業も行われています。ただ、広葉樹林業は始まってまだ40年あまり。針葉樹に比べて成長が遅い広葉樹はまだまだ発展途中です。今後は広葉樹林業も発展していき、主幹産業となってくれると嬉しいですね。

里山研究園ではオキナワシャリンバイ、ナギ、モッコクといった、まだ林業として確立していない樹種を試験的に植栽し、どのように育て、活用していくかを研究中です。
 
例えばオキナワシャリンバイは樹皮が沖縄の伝統織物である芭蕉布の染料として使われます。
樹皮が取れればよいので、木材として大きく育てる必要はなく2~30年で収穫できないか検討されています。 


以上で実習プログラム終了です!

最後に沖縄島最北端の辺戸岬へ寄って絶景を堪能し、宿泊施設へ帰着。
次の日にレポートを提出し解散となりました。
辺戸岬(たまにウミガメが息継ぎに浮上してきます!)
 
 
 
今回の実習中は毎日ほぼ快晴で、気温は暑かったですがとても良い日和でした。
最後になりましたが、本実習を運営された高嶋先生、松本先生、与那フィールド職員の皆さま、ゆかいなTAのお二人。本当にお世話になりました。
学生さんたちもマニアックな(いい意味で)コたちが多く、私も楽しく過ごすことができました。
また是非沖縄に行きたいと思います!

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