2023年9月21日木曜日

琉球大学公開森林実習「亜熱帯林体験実習」1


 北海道大学中川研究林 技術職員の間宮です。
2023年8月21日~24日にかけて、琉球大学農学部付属 亜熱帯フィールド科学教育研究センター 与那フィールドにて3泊4日で開催された公開森林実習「亜熱帯林体験実習」について参加してきたのでご紹介します。

この実習は沖縄やんばる地域の亜熱帯林の動植物を観察し、どの様にヒトと共生しているのか(いくのか)を学ぶという内容でした。
実習は公開森林実習として行われ、琉球大学、山形大学、京都大学、京都府立大学から11名の学生が参加しました。

 

  <0日目>

 私、北海道の北部在住ですので、沖縄に行くだけで1日かかってしまうんです。

 というわけで、飛行機を乗り継ぎいざ沖縄那覇へ

 
 はい。着きました(移動時間10時間半)。 
 この日は那覇市内のホテルに宿泊し、沖縄名物を堪能させていただきました。
 
 
 <1日目>
 実習初日です。

那覇から高速バス・路線バスを乗り継いで "奥間ビーチ入口"という素敵な名前のバス停に集合します。 でもビーチには行きません。なんと言ったって「亜熱帯林体験実習」ですからね。

大学のマイクロバスで迎えに来ていただき、少し内陸へ。琉球大学 与那フィールド到着です。 

宿泊施設が併設された教育施設で実習等でよく利用されるそうです。常駐の教員・職員さんもいらっしゃる研究施設でもあります。今回の実習は琉球大学の高嶋先生がメインで担当されており、実習全般で解説してくださいました。

簡単なガイダンスの後、早速1つ目のメニュー「ヤンバルクイナの生態観察」へ。


 ヤンバルクイナ生態展示学習施設「クイナの森」は、沖縄北部のみに生息する飛べない鳥、ヤンバルクイナの生態や沖縄の自然と人々の歴史を知ることのできる施設です。保護されたヤンバルクイナを野生に返したり、施設内で繁殖させたりしています。基本的には保護施設であり、展示されているのは1羽のみでした。他の個体はなるべく人間に触れさせないように飼育しているそうです。

こちらなんと展示8日目、三代目の「ヒッター」くん(本当はまだ名前は付いていないけど、二代目のピンチヒッターということでヒッターくん)。年齢は5歳です。

警戒心が強いというヤンバルクイナですが、ヒッターくんはとても好奇心旺盛で、観察しているとガラス越しのすぐ近くまで寄ってきてくれました!野生ではなかなか見ることが難しいので、皆さん機会があれば是非行ってみてください。
 

ヤンバルクイナは国の天然記念物に指定されており、沖縄でも本島北部(大宜味村、国頭村、東村) にしか生息していない希少な動物です。1982年に発見され、その頃は1800羽程が生息していたと推定されています。ところが森林伐採、道路やダム建設による生息地分断や外来生物のマングースや猫、野犬による補植、交通事故(ロードキル)など、人間活動による影響を大きく受け、一時は720羽ほどまで個体数を減らしました。

近年は様々な保護活動により2000羽ほどまで増えていると推定されていますが、未だにロードキルは発生しており、継続的な努力が必要なようです。こういった普及啓発活動もその一環ですね。

マングースの話もよく耳にしますが、2000年度から沖縄県や環境省がマングース防除作業を開始し、北部ではほぼ防除が遂行されているようです。沖縄本島の真ん中あたり(SFライン)にマングース北上防止策を設置したり、わな設置などで徐々に生息地を押し下げているようです。


マングース用筒わな(他の動物の混獲を防止する形だそうです)

 

実習1日目は夕食後の夜もプログラムがあります。


 やんばるナイトウォーク!

やんばるの自然体験ツアーや野生生物調査を通じて、この森の魅力を発信していらっしゃるYambaru Greenの方に講師をお願いして、与那フィールド施設裏の夜の森散策をしました。

 たくさんの生き物に会うことができました!その本の一部をご紹介


ハナサキガエル(やんばる固有種)

 オキナワキノボリトカゲ(沖縄、奄美諸島固有種)
 
 オキナワハンミョウ(沖縄、石垣島固有種)
 

 などなど。1時間半ほどの散策でたくさんの生物に出会えました!ホタルもいましたよ!

 姿は見えませんでしたが、ヤンバルクイナの鳴き声も響いていました。

 

 <2日目> 

 さて、実習2日目。この日も快晴。朝から暑いです。


 2日目最初のプログラムは、沖縄に行ったら是非体験したいマングローブ林!

慶佐次(けさじ)川 という国頭郡東村を流れる川下に沖縄本島最大のマングローブ林が広がっています。

そこでマングローブカヤックを楽しむ!……

 

……観光客を見る学生たち

 実習ですからね!観光ではないですからね!

とはいえそこは自然環境に興味のある学生たち。川辺の木道を歩きながら解説を聞きますが、興味津々、あっちで足を止め、こっちでしゃがみこみ、なかなか進みません。

 
かくいう私も始めてのマングローブ林にテンションが上がります。
マングローブは熱帯・亜熱帯の汽水域(淡水と海水が混ざり合う)に生息している植物の総称です。慶佐次川河口付近にはオヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギの3種類の「ヒルギ科」の樹木が生育しており、マングローブ林を形成しています。
 
オヒルギの花
 
ヤエヤマヒルギの果実(葉の付け根あたりの卵形)と幼根(果実から垂れ下がる)
 
ヤエヤマヒルギは胎生種子が特徴で、果実が樹上にあるうちから幼根が30cmほど伸びます。そして成熟すると母樹から落ち、泥に突き刺さり新しい個体が成長するのです。突き刺さらなかったものは海流に運ばれて離れた場所に分布を広げることもあるそうです。
汽水域なので植物にとって有害な塩分が多量にありますが、マングローブの植物たちは根で塩を濾し取って、さらに濾しきれない塩分は葉に貯めて落葉により排出するとのことです。
ガッツがありますね。

マングローブ林を利用する生き物もたくさんいて、シオマネキやミナミトビハゼ(トントンミー!)も見ることができました。
 
 
ミナミトビハゼ…どこに居るかわかりますか?
 
 
続いて訪れたのは環境省のビジターセンター
やんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」です。
 
ここでは、やんばるの自然が貴重なのは何故なのか、わかりやすく紹介されていました。初日に訪れたクイナの森はヤンバルクイナにフォーカスした施設でしたが、ウフギー自然館ではやんばる地域に生息する様々な野生生物について、標本や掲示などで詳しく解説しています。
マングースのポスターが印象的でした


 長くなってきたのでここで一旦切ります。

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