2013年10月29日火曜日

研究利用 東北大学 山口大輔さん@苫小牧研究林

みなさん、こんにちは。特任助教の佐伯です。

今日は、苫小牧研究林に調査に来てくださった、東北大学博士課程1年の山口大輔(やまぐちだいすけ)さんをご紹介します。



山口大輔さん

山口さんは、ミズナラの葉の光合成速度の季節変化について研究をされています。ミズナラは、北海道に最もたくさん生えている樹木の一つです。そして「光合成」は、樹木にとって、日々成長し、エネルギーを得ていくための大切な営みです。春、夏、秋と、ミズナラの光合成を追い続ける山口さん。今回は、山口さんの主たる研究サイトである、地上25メートルの林冠クレーンの上で、お話をうかがいました。

苫小牧研究林にある、林冠クレーンです。

ゴンドラにのって移動できるので、クレーンのまわりにある樹木の枝先や葉の部分を観察することができます。

******** ではここから、空中散歩をしながらのインタビューをお楽しみください。 ********

佐伯: 今日はお忙しいなか、取材に応じてくださり、どうもありがとうございました。

山口: いえいえ、こちらこそ、苫小牧研究林のみなさんにはいつもお世話になっています。

佐伯: 山口さんは、東北大学のご所属ですが、もう長く、苫小牧研究林を調査地として利用してくださっていますね。このクレーンも、ずっと使ってくださっているのですか?

山口: はい。修士のころからですから、利用しはじめてもうすぐ3年になります。

佐伯: じゃあ、私よりも操作がずっと上手ですね(笑)。あ、この機械はなんですか?

山口: これは、Licor(ライカ)のLI-6400といって、植物の葉の光合成や呼吸をはかる装置です。植物の生理生態を研究している人であれば、よく使う機械ですよ。

「LI-6400」
植物の葉の光合成速度や呼吸速度を測れる機械だそうです。

佐伯: あれ、でもここに、「サザエ」っていうシールが貼ってありますが・・・。

山口: あ、これ、機械の名前なんです。僕の所属している東北大学の彦坂研究室には、このタイプの機械が3台あって、それぞれ、「サザエ」、「カツオ」、「ワカメ」っていう名前がついているんです。

佐伯: ・・・(大爆笑)・・・

山口: この「サザエ」は3つの中では一番、野外でがんばってくれていて、僕はいつもこれを使っています。



「サザエ」には、写真にあるような測定機器がついています。
山口さんは、左手にクレーンのリモコン(黄色)、右手に測定対象のミズナラの葉を持って、
きびきびと測定方法を教えてくださいました。
 
山口: このミズナラが、僕がいつも調査している木です。

ミズナラ

佐伯: うわー、大きくてきれいな木ですね。

山口: 全部で4本調査しているのですが、毎年、同じ個体の同じ場所で光合成を測ることで、年による季節変動によってミズナラの光合成がどのように変化するのか調べています。長期的なデータを蓄積していくことで、樹木の温暖化影響の予測にも役立てたいと考えています。

サザエの先端部には、大きな洗濯バサミのような機械がついていて、
葉をはさんで測定を行います。洗濯バサミではさんだ葉の部分から出る
二酸化炭素の濃度を、赤外線センサーを使って精密に測定することにより、
光合成速度や呼吸速度を計測できるのだそうです。サザエ、すごいぞ!!!

佐伯: この「サザエ」は、こうやって使うんですね。とても複雑そうですが、山口さん、操作がスムーズで、さすがですね。

山口: ありがとうございます。でも、ときどき樹木も機嫌が悪いときがあって、気孔を閉じてしまってうまく測れないときがあるんです。そういうことがあまりないよう、測定するときの時間や気温、天気などには、いつも注意をはらっています。

佐伯: 樹木にも、機嫌の良しあしがあるんですか。(目からうろこ)

山口: はい。僕は、光合成がうまく測れない状態を、「やる気がなくなっちゃった」ということもあります。

佐伯: (笑)。 樹木と気持ちが通じ合えるなんて、なんだか素敵なご研究ですね。

クレーンのゴンドラから、樹冠(じゅかん)の海を見下ろします。
ゴンドラの影がうつっているの、わかりますか?

佐伯: 山口さんにとって、ご自身の研究の面白さは、どんなところにありますか?

山口: 僕は、こうしたクレーンやジャングルジムを使って、樹木の光合成速度や呼吸速度、そのほか、様々な生理学的機能を調査しています。野外で、自然に生育している樹木の生理生態を調査できることが、とても面白いと感じています。光合成に関する研究は、温室の中のポット苗など、人工環境化でコントロールされた個体を対象にしたものが多いのですが、こんなに大きく育った自生のミズナラを調査できるケースはきわめて限られているんですよ。

佐伯: そうなんですか。 しかも、地上からは決してさわることのできない、林冠の葉を対象とされているのですから、データを得る瞬間は、わくわくドキドキですね。

それにしても、今日は本当によいお天気ですね。山口さん、どうもありがとうございました。来年も、苫小牧研究林でお待ちしています!

クレーンで取材をさせていただいた日は、本当によいお天気で、
まるで山口さんを待っていたかのような青空でした。
写真の向こうには、苫小牧のソウル・マウンテン、樽前山が見えます。
山口さんは取材中、何度も、「こんな日は、とても光合成が測りたいです!」とおっしゃっていました(笑)。


山口さんには、苫小牧研究林の研究室のゼミで発表もしていただきました。
とても興味深いご研究で、質疑応答も、大変盛り上がりました。
山口さん、どうもありがとうございました。
 

<参考>
東北大学 植物生態学講座(彦坂幸毅教授)のHP
http://hostgk3.biology.tohoku.ac.jp/hikosaka/
※山口さんが所属されている研究室です。 

苫小牧研究林HP
http://forest.fsc.hokudai.ac.jp/~exfor/Toef/hp_j/0_top.html

 








     
   




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